まえがき
私の信条は『一期一会』、
「良い人との出会いは一生に一度のもの、大切にして誠意を尽くせ。」
私の好きな言葉だ。所用の帰りに小腹を満たすために、ふと立ち寄った「豊田の離れ:元町珈琲」。
ここでも、一期一会に値する出会いがあった。
店に一歩足を踏み入れると、「いらっしゃいませ。お一人様ですか。おタバコは・・・」、
とある日、一人のウエイトレスのとても心に残る仕事ぶりを見た。
TIMEを読む手を止めて一息つくと、私が陣取るテーブルの真横で、彼女は左手でテーブルの端をぐいっとつかみ、右手でゴシゴシ、まるで磨いているようであった。
「あなたは甲斐甲斐しく働いていますね。」彼女は不意を突かれたのか、驚いたようすで 『今日は暑いですね。』、団扇にみたてた手で、顔をあおぐ素振りをしながら答えてくれた。
とても爽やかで、機転の利いたリアクションに脱帽したことは言うまでもない。
以下は、「豊田の離れ:元町珈琲」で甲斐甲斐しく働くウエイトレスに、思わず私の口から飛び出した構いの一声、彼女の爽やかなリアクションを記憶に留めたものである。
元町珈琲の駐車場を歩いているとき、私は一人のウエイトレスが車に乗り込む姿をみた。雰囲気がどこか違っていたが、チラッと一目見て、すぐにあの甲斐甲斐しく働いていたウエイトレスだと気づいた。
彼女の姿を3〜4日見ていないことを思いだし、とっさに、「しばらく欠勤していましたね。」 と声をかけた。彼女はドアを半開きにして、答えてくれた。「友達の結婚式で九州に行っていました。」 ・・・・
幸いなことに、私を覚えてくれていた。何とフレンドリーなこと。
店に入りコーヒーをオーダーしてTIMEを読み始めると、何と彼女がコーヒーを運んで来てくれた。偶然は重なるものだ。「おや、まあ〜。」 って感じだ。私は不覚にも彼女を凝視して 「髪型を変えましたね。素敵ですよ。」
また、一声かけてしまった。腰の辺りまで伸びていた黒髪が、ショートの茶髪に変わっていた。
過去にさかのぼっても、ウエイトレスに声をかけたことは記憶にないのだが、元町珈琲の心地よさと彼女のフレンドリーさに、自分を見失っていたのかも知れない。
PART2
最近、家の近くの元町珈琲によく通い、小さな癒しを感じている。
この日、駐車場の中を歩いていたとき、例のウエイトレスが車の中にいることに気づいた。
私はさりげなく振り向いて、その女性をチラ見してしまった。驚いたことに、
その女性は私に微笑みながらウェイビングをしてくれた。
理由は簡単、私は元町の常連です。加えて、彼女はとても細やかなおもてなしができるので、時々、私はさりげなく彼女に話しかけたことがある。そんな時も嫌な顏ひとつせず、いつも愛想よく答えてくれた。
一回目は、「あなたはとても甲斐甲斐しく働いて居ますね。」「(手で団扇をあおぐような素振で)今日は暑いですね。」
二回目は、「しばらく欠勤していましたね。」 「友達の結婚式で九州に行っていました。」
三回目は、「髪を短くしましたね。似合っていますよ。」 「バッサリ切られてしまいました。」
PART3
例のウエイトレスがオーダーを取りに来た。私はいつものようにコーヒーを頼んだ。この時、突然、私の電話が鳴った。
私はひと気のないところで用を済まし、5分後くらいにテーブルに戻った。
「オー、マイゴッド。」 コーヒーがないではないか。しばらくすると、彼女が見計らったように温かいコーヒーを持ってきてくれた。私は驚いて、コーヒーを入れるタイミングを調整したのか聞いてみた。
彼女は、さりげなく微笑んで答えた。「冷めたコーヒーは美味しくないです。」
すかさず、私はもう一言。「あなたは機転がきいて、おもてなしができますね。」 彼女はもう一度微笑んで、その場を離れた。私は柄にもなく癒しを感じた。「元町以外の喫茶店に行けないな〜。」
PART4
私が店に入ると、例のおもてなしができるウエイトレスはカウンターの向こうでコーヒーやスイーツを作っていた。
私は常連なので、ワーキングシフトを少し心得ている。カウンターの向こうのウエイトレスがカウンターの外に出てくるのは稀だ。
テーブルに着くや否や、ウエイターが私のテーブルに来たので、いつものようにブレンドコーヒーを頼んだ。
しばらくすると、驚いたことに、例のウエイトレスが私のテーブルにコーヒーを持って来てくれた。「今日は中ではないのですか。 」思わず私は言ってしまった。
ちょっと変なそぶりで-−彼女は隣の客をちらっとみて、インボイスの入ったケースを口の横にあてて−-
「はい、実はそうなんです。」と微笑みながら答えてくれた。「今日はラッキー、ありがとう。」思わず私は言ってしまった。本音とはいえ、自分ながら少し恥ずかしい。
例のウエイトレスはカウンターの向こうでコーヒーを作っていた。店に入るや否や、フロアー担当の中年のウエイトレスが言った。「2人掛けの席が空いていますので、どうぞ。」 私はそのテーブルの方に向かった。
突然、例のウエイトレスが足早にカウンターから出てきて、私に言った。「直ぐ片づけますね。」
彼女は素早く4人掛けのテーブルの上を片づけてくれた。彼女はとても機転がきいて、おもてなしができる。彼女は私がいつも英文雑誌を読みながら、電子辞書を引いていることを知っている。
私はいつものようにコーヒーを注文した。しばらくすると、彼女がコーヒーを運んで来てくれた。私はすかさず言ってしまった。「あなたは相変わらず、気が利きますね。」
彼女ははにかみながら答えた。「いや、いや。そんなことないですよ。」 彼女は微笑みを残して、私のテーブルを離れた。私はおじさんで、安全パイなので何でも言えるんですよ。
PART6
その日は、例のウエイトレスはフロー担当であった。私はいつものようにコーヒーを飲みながら英語マガジンを楽しんだ。
私が読書を終えてレジの方に行くと、とても長い行列ができていた。
私が最後尾で支払いを待っていると、彼女が近づいてきて言った。「私が預かっておきますよ。」
前に沢山のお客さんがいたので、少しためらいがあったが、ここは素直に預かって貰うことにした。.
なぜ彼女は預かってくれたか、理由は明らかだ。彼女は自然なおもてなしができる。私は常連で、いつもチケットで支払いをしている。
でも、いくらレジが混んでいても、他のウエイターやウエイトレスは、そんなことには気を使ってくれません。彼女は本当に気が利くんですよ。
PART7【2014/1/5】
例のウエイトレスはフロアー担当で、甲斐甲斐しく働いていた。私はいつものようにコーヒーを飲みながら、TIMEを楽しんだ。
しばらくして、店内を見渡すと彼女の姿が消えていた。40分くらいたったであろうか。10名位の一団が座敷からでてきた。彼らはとても仲の良さそうな家族に見えた。
頭をあげると、彼女が一才くらいの子供を抱いていた。ぼんやり見ていたら、彼女と一瞬目が合った。 彼女は一言独り言をいったようだ。
「私の子供ではないですよ。」
私は彼女が独身でも既婚でもかまわない。正直にいえば、ファンの一人として、独身がいい。.
彼女のチャーミングな笑顔の中に「おやっ」 っと、気づいたことが一つある。 次の機会に確かめてみよう。
PART8
私が入り口にさしかかると、例のウエイトレスがドアを開けて、笑顔で中に招き入れてくれた。そして、空テーブルに案内してくれた。
私がタイムを読み始めると、彼女がオーダーを取りにきた。私のオーダーはいつも同じ、ホットコーヒーだけ。しばらくすると、彼女がコーヒーを運んで来てくれた。
こんな日は滅多にない。彼女が入り口を開けてくれて、オーダーを取りに来て、コーヒーを運んでくれる。
こんな日は例外中の例外。
気をよくして、謎解きのチャンスとばかりに、カマをかけてみた。「最近、大発見をしてしまいました。
エクボがあるんじゃないですか?」 彼女は一瞬びっくりした表情をしたが、私はすかさず、「右? 左?」と聞いた。
彼女はにっこり笑って、「両方です。」と答えてくれた。この時、私の目は彼女のエクボをハッキリとらえた。彼女は、「恥ずかし〜い。」と一言残して、私のテーブルから去っていった。
そっか、エクボって笑うとできるのか。なんて、チャーミングなエクボなんだろう。
PART9
店に入ると、ウエイトレスが空き席に案内してくれた。
私が席に着こうとすると、例のウエイトレスが仕切りの向こう側でテーブルの上を片づけていた。
私はとっさにその場所に席を移した。
その席は静かでエアコンの風も吹かない読書にはベストな場所なのだ。コーヒーが運ばれてくると、私はいつものようにTIMEを読み始めた。
私は周りに客がいないときには、時々彼女に声をかける。
しかし、この日は彼女がテーブルの上を一生懸命片づけていたので、その機会を逸してしまった。
仕方なく、TIMEに戻ると、彼女はクリーニングがひと段落したのか、私に声をかけてくれた。「いつも精がでますね。」 「えっ!!」 彼女からの声掛けは初めてだったので、とっても驚いた。「英会話のネタ作りなんですよ。」
「英語って手ごわいですよね。」「いえいえ、気長にやれば誰でもしゃべれますよ。」「そうなんですか。何を読んでいるんですか。」彼女はチラッとテーブルの上をみて、「TIMEですね。」
・・・ 彼女はいつものことながら、トレーの上に溢れんばかりのテーブルウエアーをのせて、足早に去っていった。
店に入るや否や、例のウエイトレスが空き席を指さして、手招きしてくれた。席についてしばらくすると彼女がオーダーを取りに来たので、いつものようにホットコーヒーを頼んだ。
しばらくすると、彼女がコーヒーを運んできた。私の記憶では、同じ人がオーダーをとって、コーヒーを運んでくることはなかった。私は思わず彼女に言った。「今日はダブルですね。」
彼女は機転を利かせて答えた。「水とコーヒーですか。」 これは、彼女がオーダーを取りに来て、コーヒーも運んでくれたことを指す。 私はまた思わず言ってしまった。「今日はラッキーデイですよ。」 彼女は一瞬キョトンとして 「よかったです。」 と一言残してテーブルを離れた。
もちろん、営業用の一言ではあるが、理解の仕方はいろいろだ。「よかったね、お客さん。」、「ウエイトレスとして、そんな風に言われて嬉しい。」 想像だけは膨らむばかりだ。
PART11
この日、私は3時半ころ店にはいった。例のウエイトレスの姿はなかった。私はいつものようにホットコーヒーをオーダーして、TIMEをしばらく楽しんだ。
これまでの経験で、彼女は遅くとも4時ころまでには入店していた。ちらりと時計をみると5時であったが、まだ彼女の姿はない。私は諦めてレジに向かった。
するとどうだ、例のウエイトレスがレジの隣でコーヒーを作っているではないか。
私は支払いを済ませ、彼女に言った。「こんなところにお見えになっていたんですか。」
彼女は冗談っぽく笑顔で答えてくれた。「こんなところで、お見えになっていたんですよ。
ということは、月曜日以外は、必ず彼女の姿をみることができる。これはグッドニュース、私は何となく心ウキウキした気分で店をでた。
PART12
こんなに気の利くウエイトレスはどこにもいない。以前から、私は一目置いていたが、想像をはるかに超えていた。
この日は、朝から断続的に雨が降っていた。午後になると雨足が強くなっていた。それでも、私はTIMEのノルマをこなすべく元町に向かった。案の定、駐車場から店までの間で、ズボンの足先と腕を濡らした。
店に入るや否や、例のウエイトレスが笑顔で出迎えてくれた。
席に着くと彼女がオーダーを取りに来た。私がハンカチで腕を拭っていると、彼女は言った。「タオルをお持ちしましょうか。」「いいえ、大丈夫です。」
私は腕が少し濡れていただけなので、丁寧にお断りをしたが、内心、こんなウエイトレスもいるのかと痛く感動した。
心地よい雰囲気の中でTIMEが読めるのは、元町に彼女のようなウエイトレスがいるからからであろう。
PART13
私はいつものようにTIMEのノルマをこなすために元町にいった。エクボが可愛い例のウエイトレスが出迎えてくれた。
しばらくすると、彼女がオーダーを取りにきた。私のいつものようにブレンドコーヒーを頼んだ。私は彼女を見て、二三日前に見たテレビの対談番組に出ていた若い女優を思い出した。「似ている。・・・」
私がぼんやり考えていると、彼女がコーヒーを運んできた。
彼女をチラ見して確信した。「確かに似ている。」 私は思わず、彼女に言ってしまった。「Nさんは、相武紗季に似ていますよ。似ているのはエクボだけじゃありません。見た感じも似ていますよ。」
「いやいや、そんなことはないです。」 彼女は否定した。
「でも、相武紗季ですか。嬉し〜〜い。」 彼女は恥ずかしそうに、一言残してテーブルを後にした。
PART14
店に入るや否や、例のウエイトレスが出迎えてくれた。
彼女は2〜3日お休みをしていた。いやいや、シフトの関係で私が来る時間に居なかっただけかも知れない。代わりに、新顔が働いていた。
この日は、久々に彼女がオーダーを取りに来た。私は黙っていればいいものを、また一言構ってしまった。「新人が居たので、Nさんが止めてしまったのかと思っていましたよ。」
彼女は笑顔で答えてくれた。「止めないですよ。」
私は思わず、また一言、「よかった〜。」
勿論、私が元町に来るのはTIMEのノルマをこなすためではあるが、実際、彼女がいなかったら、こんなにも頻繁に元町に来ないかも知れない。
207が見当たらなかったので、例のウエイトレスは居ないと思っていた。久しぶりにセレクトコーヒーをオーダーし、しばらくTIMEを楽しんだ、TIMEを読み終えてレジにいくと、例のウエイトレスがいるではないか。
彼女はレシートをチラッと見て言った。「珍しいですね。」 私は答えた。「ちょっと、気分をかえてリッチなコーヒーを飲んだんですよ。」私はチケットに加えて、120円を払おうとしたら、彼女は申し訳なさそうな顔をして言った。
「このコーヒーにはチケットが使えないんですよ。」 平謝りで、お辞儀をした。
彼女はエクボの笑顔で答えてくれた。「お待ちしています。」
コーヒー代として520円払ったが、実際、それはコクがあって、美味しかったことは言うまでもない。
私は彼女のエクボを真近で見ることができた。・・・これはおまけ!!
PART16
行きつけの飲み屋で、「元町にすごく器量がいいウエイトレスがいて、エクボがとてもチャーミングなんだよ〜。」 って話をしていたら、ママさんたちが、その女性を是非見てみたいと言い出した。
私はもちろん冗談とは思っていたが、このことを彼女に前もって言っておくべきか、言わない方がいいのか、内心迷っていた。
とある日、私は腹をきめて、例のウエイトレスに 「Nさん!!」って呼びかけた。
「美女と野獣のグループが、Nさんって誰って、聞くかも知れないですよ。」
私はさらに言葉を続けた。「彼女たちは、実は既に2回来ているんですよ。1回目はいっぱい客が待っていて、諦めて帰ったそうです。
2回目はそれらしいウエイトレスがいなかったようです。シフトがずれていたかも知れないです。もし来たら、適当にかわしてくださいね。」
彼女はチャーミングなので、そんな輩がいっぱい居るにちがいない。「美女と野獣ですか?」 動じる様子もなく、にっこり笑って私のテーブルを去っていった。
PART17
私は、偶然、コンビニで行きつけの飲み屋のママさんに会った。ママさんは私に尋ねた。「先生、元町に行くの〜?」 私は答えた。「もちろん、エクボを見に行きますよ。」
いつものようにコーヒーを飲みながらTIMEを読んでいるとママさんからメールが入った。「Nさんいますか?」 私は返信した。「いますよ。」
しばらくすると、いつもの飲み友達4人組がやってきた。ママさんが常連客にメールしたのだ。彼らはNさんを偵察に来たのだ。
私は別のテーブルにいたので、会話の多くを聞くことはできなかったが、確か、ママさんが彼女に連れを召使と紹介していた。
連れの一人Aさんは、時折私の方をチラチラ見て、にやけていた。私は平静を装おっていたが、気が散っていつものようにTIMEが読めなかった。
「彼らは少し賑やかですが、良い人達と思いません?」帰り際にレジで、彼女に尋ねたら、「はい!」って、いつものチャーミングな笑顔の中にエクボが垣間見えた。
PART18
この日は、店に入るや否や、例のウエイトレスが一番奥の空き席へ案内してくれた。
しばらくすると、私がオーダーしたブレンドコーヒーを持ってきてくれた。私は常連なので、彼女が休日も取らずに、ずっと働きづめでいたことに気づいていた。思い切って、ねぎらいの言葉を投げかけた。
「働きづめで体を壊さないようにしてくださいよ。」 彼女は少し恥ずかしそうに言った。
「10連勤なんですよ。でも、月末には4連休を頂きます。」私は続けた。「もしあなたが、おやすみをするとエクボが見えなくなってしまいます。」 彼女はニッコリ笑って答えた。「ありがとうございます。」
私がTIMEを読み終えて、レジに向かうとコーヒー作りの手をとめて、彼女は素早くレジに移動してくれた。私が支払いを終えると、彼女はにっこりエクボを見せながら言った。 「明日はおやすみをいただきます。」
成りゆきとはいえ、私が尋ねてもいないのに、次のお休みの日を教えてくれた。後になってカレンダーでチェックしたら、その日は10日勤務の最後の日であった。
たったそれだけの会話であったが、正直、私はしっかり癒された気分であった。
PART19
例のウエイトレスが店のドアを開けて、私を中に招き入れてくれた。これが元町珈琲のおもてなしのスタイルのようだ。私は奥の2人掛けの席に着いた。
しばらくすると、彼女がオーダーを取りに来た。私はいつものようにブレンドコーヒーをオーダーした。よせばいいものを、また一言構ってしまった。以前、彼女が月曜日はお休みだと教えてくれたことを忘れてはいない。今日は火曜日だ。
「昨日はゆっくりできましたか。」 彼女は答えてくれた。「伊勢神宮に行ってきました。」
普通なら、次の言葉はこうだ。「リフレッシュできてよかったですね。」
ところが、私の口からでた言葉はこうだ。「Nさんがお休みの時にも、元町には来ましたよ。でも、TIMEに気合が入りませんでした。やはり、エクボを見ないとダメです。」
本音とはいえ、これではまるで告白だ。それでも、彼女は嫌な顔をせず、「ありがとうございます。」 と一言残してテーブルを離れた。
彼女のキビキビした日々の接客振りをみて一目置いていたが、女性としてチャーミングなだけでなく、振る舞いもしっかりとした大人の女性だ。
例のウエイトレスはカウンターの一番奥でスイーツを作っていた。彼女がフロアーに出てきて接客をすることは稀だ。
つまり、彼女に言葉をかけることができない。私は諦めて、TIMEに集中した。・・・
レジで精算を終えて、出口に向かう途中に、カウンターの奥の方にチラッと目をやると、彼女と目が合った。彼女は横に他のウエイトレスが居るにもかかわらず、左手をあげて私に言った。「明日から四日間おやすみを頂きます。」
「あなたのエクボが見えなくなってがっくりです。」私は即座に答えた。
彼女は聞き取れなかったようで、聞き耳を立てた。私は言葉を変えた。 「しっかりリフレッシュシしてくださいね。」 今度は聞き取れたようで、チャーミングなエクボを見せながら微笑んでくれた。
思いがけない一声だったので、正直、私はしっかり癒された気分だ。
PART21
店に入るやいなや、ウエイトレスが空き席を指さしていった。「お好きな席にどうぞ!」 この日は空いていたので、TIMEにはベストな奥の席について、いつものようにブレンドコーヒーをオーダーした。
例のウエイトレスが近くのテーブルの上を片づけていた。いくぶんか席が離れていたが、他の客がいなかったので、彼女に声をかけた。
「今日は珍しく空いていますね。」「そうです。珍しいことですよ。外は暑くなかったですか。」「少し暑いかな。でも、私は夏が好きなので・・・。」少し言葉を交わした後、私がいつも気になっていたことを投げかけた。
「Nさんは、一番奥で働いて居る時には、すごく特徴があるんですよ。首が少し左に傾いて、こんな風に・・・。すごく一生懸命って感じですよ・・。」 彼女は答えた。「下ごしらえに集中すると、癖が出るんですよね。・・・」
彼女はいつものことながら、トレーの上に溢れんばかりのテーブルウエアーをのせて、足早に去っていった。
しばらくすると、コーヒーが運ばれてきた。思いがけず、またそれは彼女であった。 彼女はコーヒーをテーブルに置くと一言いった。「ごゆっくり、どうぞ。」
「はい、はい。」 私は思わず滑稽に答えてしまった。私は止めておけばいいものを、また一言余分なことを言ってしまった。「こんなときは、軽くはいっていうか、ありがとうですよね。」
彼女は去り際に振り向いて、チャーミングなエクボを見せて微笑んで答えた
「はい、はい。」 やはり、彼女は気が利くばかりでなく、とてもウイットもある。 だから、私はそんなウエイトレスのいる元町のファンなのだ。
PART22
店に入るや否や、ウエイトレスが言った。「お好きな席へどうぞ。」 私はTIMEを読むにはベストの奥の席に着いてしばらくすると、思いがけず、例のウエイトレスがオーダーを取りに来た。
普段なら招き入れてくれたウエイトレスが来るはずなのだが、この日は違った。私は少し気分をよくして、少しリッチなコーヒーを頼んだ後、また彼女を構ってしまった。
「今日は何か雰囲気が違いますね〜。ますます、(相武紗季に)似て来ていますよ。」 私が一言かけると、ウイットの効いた返答をするので、ついつい口が滑ってしまう。
コーヒーの置き際に、彼女の顔を目のあたりにして、ドキッとした。
本当に似ている。彼女は去り際に振り向いて、にっこり微笑んでチャーミングなエクボを見せて去って行った。
しばらくすると、コーヒーが運ばれてきた。またそれは彼女であった。 彼女はコーヒーをテーブルに置くと、いつものように一言いった。「ごゆっくり、どうぞ。」
私は懲りずに、また一言余分なことをいってしまった。「今日はいい日ですよ。ありがとう。」 彼女はにっこり微笑んだ。
私が一言余分なことを言っても、いつも感じの良い受け答えをしてくれる。
私が元町に来るのは、TIMEのノルマをこなすだけでなく、無意識に何か癒された気分に浸るためなのかも知れない。
PART23
店に入るやいなや、例のウエイトレスが空き席へ案内してくれた。彼女は4日ばかりお休みしていた。席に着くと、彼女がオーダーを取りに来た。彼女の姿を見るのは久しぶりだったので、またついつい構ってしまった。
「Nさんの姿をみるのは、久しぶりですね。」 彼女は答えてくれた。「福岡で友達の結婚式があったので、おやすみを頂いていました。」 私は懲りずに続けた。 「二三日前に新人がいたので、Nさんがもう止めてしまったのか気になっていました。」
彼女はにっこり微笑んで答えた。 「そんなことありませんよ。」 正直言って、私は安堵した。私は少し気分を良くしたので、リッチなコーヒーをオーダーした。
しばらくすると、彼女がコーヒーを持ってきてくれた。そこでまた彼女に一言、「私はここに来るときは207が気になるんですよ。」 「それ、ワタシ、ワタシ。」 彼女はチャーミングなエクボを見せながら微笑んだ。
私はそのフレンドリーな返事に気を良くして、また一言、「私はここへ来ると、ついつい207を探してしまうんですよ。
207の持ち主は元町の看板娘なので、おやすみを取ると残念がるお客さんがいますよ。」 彼女はもう一度微笑んでテーブルを去っていった。
TIMEのノルマを終えてレジに向かうと、彼女はコーヒーを作るところにいたが、直ぐレジに移動してくれた。私は520円を差し出して言った。「今日はこれでお願いします。」
彼女はまたエクボを見せて答えた。「そうですよね。たまにはコインも使わないと忘れてしまいますよね。」 やはり、彼女にはウットがある。
私が出口に向かうと後ろから元気な声が聞こえた。「ありがとうございました。」今日はトリプルで、こんな日は滅多にない。
私は最高に気分を良くしていたので、私は思わず振り返って、自分の頬に指をさして、また余分な一言を投げかけてしまった。
「エクボを見ないといけないので、また来ますよ。」 私はおじさんなので、これ以上は言えないが、彼女には本当に癒される。
PART24
私は一番奥の席で美味しいコーヒーを味わいながらTIMEを楽しんでいた。四時半頃であった。例のウエイトレスが隣のテーブルを片づけていた。彼女のクリーニングの仕方は他のウエイトレスと少し違っている。
私はTIMEを読む手を止めて、彼女に一言投げかけた。「Nさんのテーブルのクリーニングは他の人とは違っていますね。そんな風にごしごし拭いている人は居ませんよ。」
彼女はちらっとこちらを向いて答えてくれた。「どうせやるなら、きっちりやりたいですから。」 「はじめてみた時は、テーブルの端をこうやって握って、ごしごしやっていました。」
彼女は驚いた様子で続けた。「良く見ていますね。」
彼女は以前にも見せた、手を団扇にみたてて顔を仰ぐそぶりを見せて言った。「それはいい意味でですか。」 私は即座に答えた。「もちろんですよ。」
私にはスケベ心はゼロだが、チャーミングな女性には素直にチャーミングと言いたい男心くらいは持っている。
例のウエイトレスはカウンターの向こうで、何やら下ごしらえをしていた。彼女は接客が立て込んでくると、時折、フロアーのサポートに回っていた。
TIMEを読む手を止めて、彼女を見ると何やら雰囲気が違っていた。
私が支払いを終えて出口に向かうと、カウンターの奥にいるにもかかわらず、「ありがとうございました。」 といって見送ってくれた。
私は髪型が少し変わっていたことに気づいて、「おやっ?」 というそぶりで首を傾けた。彼女はカウンター越しににっこり笑って、少し首を横にひねって後ろ髪をみせてくれた。
髪型がポニーテールに変わっていた。
エクボに加えて、チャーミングさが倍増、女性は髪型を変えるだけで、別人のように変わるものだ。 とても大人可愛い。
PART26
今日は月曜日。席に着いてしばらくすると、この日はお休みのはずだが、例のウエイトレスがオーダーを取りに来た。
私は元町に来る度に、彼女のキビキビした接客態度にいつも感心している。
気分を良くして、また構ってしまった。 「今日はハッピーデイなので、セレクトコーヒーをお願いします。他のウエイトレスは、前髪も含めてポニーテールにしていますが、Nさんは左側の前髪が前に垂れていて、特徴が出ていますよ。グー!! OKです。」 私はただの客で品定めをする権利は全くないのだが・・。
それにも関わらず、彼女は嫌な顔をせず答えてくれた。「ありがとうございます。」
PART27【2014/6/14】
今日は火曜日なので休み明けのはずだが、駐車場には207が止まっていない。ところがどうだ、店にはいると例のウエイトレスは、いつものように甲斐甲斐しく動き回っていた。207をいつもとは違うところに車を止めたようだ。
私がTIMEを読んで一息ついていると、彼女が隣のテーブルを片づけに来た。私はまた構ってしまった。「いつも甲斐甲斐しく働いて居ますね。」 彼女は手を止めて答えてくれた。「てきぱきとやりたいので・・・ 」 「Nさんは、人の2倍は働いて居ますよ。・・・また、髪型をもとに戻しましたね。初めて見たときはロングでした。」
彼女は嫌なそぶりも見せず答えてくれた。「よく見ていますね。この辺までありました。どんな髪型が好きですか。」 私は素直に答えた。「みんな素敵ですが、今が最高にチャーミングですよ。Very Goodです。」 彼女はなにか意味ありげな笑みを残して私のテーブル離れた。
PART28【2014/6/19】
例のウエイトレスは相変わらず、キビキビと動き回っていた。この日は雰囲気が違った。4〜5日前の髪型はショートで少し内側にカールしていたが、今日はポニーテールだ。
TIMEを読み終えてレジに向かうと、彼女はコーヒーを作る手を止めて、素早くレジに移動してくれた。
私はまた構ってしまった。 「また髪型をもとに戻しましたね。(ポニーテールに)」 彼女は笑みを浮かべながら答えてくれた。「なにか馬のしっぽみたいになっていませんか。いろいろあるんですよ。」
私には確信はないが、だいたい想像はできる。「分かっていますよ。(暑いから、髪が首筋にかかるとうっとうしい。)」
内側にカールしたショートもチャーミングだが、仕事場ではポニーもやむを得ない。でも、よくよく見れば、ポニーも負けず劣らずとてもチャーミングだ。
PART29
この日は、元町コーヒーの前の交差点で交通事故があった。私が店に入るとウエイトレスが言った。「お好きな席へどうぞ。」 私が席に着くと、例のウエイトレスがオーダーを取りに来た。
私は彼女とその事故について、二三言葉を交わした後、特別な気持ちを込めて少しリッチなコーヒーをオーダーした。そして、私は一言構った。「私って凄く分かり易いと思いませんか。」
彼女はエクボを見せて笑って答えてくれた。「非常に分かり易いです。他のウエイトレスにもオーダーしていたりして・・・。」
さすが、彼女は鋭い。私は素直に答えた。「私は誰にでもセレクトコーヒーをオーダーしません。(Nさんだけです。)」
私はおじさんなので、これ以上は言えないが、彼女は何となく構いたくなるチャーミングな女性なのだ。
例のウエイトレスはフロアー担当だ。彼女がコーヒーを運んできた時、また、近くに客がいない時には、彼女を構うことにしている。彼女のウットのある返しは鋭い。
「Nさんを真近で見るのは久しぶりですよ。」彼女は「そうですね。」と答えた。彼女はコーヒーをテーブルに置くや否や、真顔で顔を横に向けた。まるでここを見てと言わんばかりだ。
私は直ぐに彼女が髪型を変えたことに気づいた。私が「髪型が少し変わりましたね。」というと、彼女は更に首をひねり、後ろ髪を見せてくれた。私は素直に答えた。「すごく素敵ですよ。」 私の記憶では、彼女は昨年の夏の入店以来、3回髪型を変えたことになる。
その都度、私がちょっかいを出すので、先を見越して新しい髪型を見せてくれたのであろう。
PART31【2014/7/10】
この日は台風8号が近づいていたが、私はいつも通り元町コーヒーに行った。私が席に着くと、例のウエイトレスがやって来た。
常々彼女がオーダーを取りに来たら、セレクトコーヒーをオーダーしようと思っていた。
私は迷うことなく(セレクトコーヒー)ブラジルをオーダーした。私はまた彼女に構ってしまった。「恥ずかしいくらい分かり易いですね。」 彼女は少し真顔になってテーブルを離れた。
しばらくすると、彼女がコーヒーを運んできた。私はもう一言構おうとしたが、昨日彼女に言ったことが頭をよぎり言葉を失った。するとどうだ、珍しく彼女の方から一言あった。
「ブラジルの後はコロンビアでした。キリマンジャロはその後です。」 私は感激した。
やはり、彼女はチャーミングなだけでなく、気が利く女性だ。昨日、彼女がいった間違いをわざわざ訂正してくれたのだ。
私は感激のあまり、思わず彼女に言ってしまった。「コーヒーならキリマンジャロですが、ここへ来るのはNさんの髪型を見るためなんですよ。」
この言葉は私の本音に近いが、100%ではない。
レジで支払いを終えて出口に向かうと、カウンターの後ろから元気な声が聞こえた。「ありがとうございました。」
PART32【2014/7/15】
私が店に入ると、フロアー担当のウエイトレスが空き席に案内してくれた。私はそのウエイトレスがオーダーを取りに来ると思ったが、以外にも、例のウエイトレスがオーダーを取りに来た。
私は思わず彼女に、「おや〜」 と言ってしまった。彼女もまた 「おや〜」 とフレンドリーに言った。これが彼女の最初のリアクションだ。私はセレクトコーヒーをオーダーした。
しばらくすると、彼女がコーヒーを運んできた。私はまた彼女を構ってしまった。「ここはチームワークが良いですよね。ストレスは感じないんじゃないですか?」
彼女は答えた。「いや、いや、時々ありますよ。」
私は付け加えた。 「あなた方の手が空いているとき、笑い声がカウンターの方から聞こえます。」 「まあ、そんなに悪くはない職場です。」 彼女は一言残して、私のテーブルから離れようとした。
私はとっさに一言彼女に投げかけた。「あの〜」 私は心の中では尋ねたいことが沢山あるのだが、この時はなぜか言葉を失った。
彼女は振り返って、私に少し顔を近づけて、聞き耳を立てる振りをした。
彼女は微笑みながら言った。「なに、なに?」 これが2回目のリアクションだ。
彼女のリアクションはいつもユニークで温かい。
PART33【2014/7/24】
'私はいつものように、3:30ころ元町コーヒーにいった。この日は木曜日なので、例のウエイトレスはいるはずなのだが、彼女は居なかった。私はいつものようにTIMEを楽しんだ。一時間くらい経ったであろうか。私は彼女が休みを取ったと思い店を出た。
駐車場を歩いていると、彼女が店の裏口に向かって歩いてきた。
彼女は私に気づいたのか、腰の辺りで円を描くように右手を回していた。私にはまったく意味不明のリアクションだ。
「今日は特に暑いですね。この時間の出勤だと夜は遅くなりますね。頑張って下さい。」 私はとっさに一言投げかけて、そのまま愛車に向かった。背後で彼女の声が聞こえたが、誰やら他の人と話していると思い、あえて後ろを振り返ることはしなかった。
後になって思い出してみると、私に何か言葉を投げかけていたようだ。
後日、彼女がコーヒーを運んできたときに、尋ねてみた。「右手を回すサインはどんな意味なんですか。 」彼女は急に少しこわばった表情になって答えた。「そのことは忘れてください。」
私は「バイバイ〜」 つまりは、「失礼します。」のフレンドリーなサインと想像していたが、どうも違うようだ。
PART34【2014/8/1】
7月24日の出来事以来、例のウエイトレスの表情が、以前に比べてすこし硬い。「仕事中は声をかけないで欲しい。」と言っているようだ。
確かに、元町コーヒーは飲み屋ではない。ウエイトレスはホステスではない。私の声掛けに、いつも彼女がフレンドリーに答えてくれていたので、少し図に乗っていたのかも知れない。
彼女のようなチャーミングで気が利く女性との一期一会は大切にしたいが、彼女の都合をもう少し考えないといけない。
最近、例のウエイトレスはいつもカウンターの向こう側にいる。つまりは、私は彼女のエクボを近くで見ることができない。
私はTIMEのノルマをこなしレジにいくと、彼女はコーヒーを準備する手を止めてレジに移動してくれた。私は彼女に一言投げかけた。「急に人がいなくなると何やらさびしい気持ちになりますよ。」
彼女は答えた。「そうなんです。この時間は急に客が退くんですよ。」私は支払いを済ませ、出口に向かった。.
自動ドアが閉まる寸前に肩越しに後ろを振り返ると、彼女がこちらを見ていた。私は普段は軽く会釈をするのだが、この日は上手くできなかった。
彼女のチャーミングな表情が硬く見えるのは私の気のせいなのか。
PART36【2014/8/22】
私のモヤモヤした気分が少し晴れた。例のウエイトレスが髪型を変えていた。彼女はいつもなら左側の前髪を前に垂らし、残りをポニーテールに束ねているのだが、この日はすべての髪を束ねていた
私は支払いを終えて出口に向かう途中、彼女の方を振り返って、両手で髪を束ねる仕草をした。
彼女はそれを見て体を反転させて、その後ろ髪を見せてくれた。
私は心の中で「ナイス!」と叫び、思わず、サムアップサインを送ってしまった。
傍にいたウエイトレスも、彼女と私のやり取りを見て笑っていた。
彼女は入店以来、メガネを含め5回くらいイメージチェンジしている。
腰の辺りまで伸びた黒髪からショートの茶髪、左側の前髪を垂らしたポニー(ショート、ロング)、そして、今日のすべてを束ねたポニー、どれも驚くばかりにチャーミングだ。
PART37【2014/9/14】
今日は日曜日、元町珈琲は混んでいた。私は店が混んでいるときは、喫煙席もOKだ。
席に着いて、回りを見回すと、例のウエイトレスが真向いのカウンターの中で、真剣な眼差しで下ごしらえをしていた。この日は髪型がいつもと違って、完全ポニーテールに決めていた。髪を束ねている小物もゴムから金具に変わっていた。「バッチ、グ〜〜、オトナ可愛い。」
左の前髪を少し垂らすポニーは、「いらっしゃいませ。」、今日のポニーは、「仕事、頑張るぞ!」 そんな意気込みがにじみ出ている。
近頃の彼女はいつもカウンターの中にいるので、声をかける機会がメッキリ減ってしまったが、この日、もしテーブルに来ていたら、一言構っていたに違いない。
PART38【2014/9/16】
7月24日の出来事以来、極力、例のウエイトレスに声をかけないようにしている。彼女に迷惑はかけられない。いつまで我慢できるかまったく自信はないのだが・・・。
支払いを終えて出口に向かう途中に、彼女の方をちらっとみると目が合った。
私は無意識のうちに、つい言葉がでてしまった。「頑張って下さいね。」 彼女は聞き耳をたてた。しっかり聞き取れなかったようだ。
「後しばらく頑張って下さいね。」 私は少し大きめの声でいった。今度は聞き取れたようで左手をあげて、微笑んで答えてくれた。 「は〜〜い。」(素振りで) 私が垣間見た彼女のチャーミングなエクボはおまけ。
PART39【2014/9/26】
例のウエイトレスは月曜日がお休みと聞いていたが、この週は火曜日、水曜日もお休みしていた。この日、店に入るや否や、チラッとカウンターの奥に目をやると、彼女がマスクをして下ごしらえをしていた。
どうも、この週末に風邪を引いてしまったようだ。
「やってしまいましたね。無理をしないでください。」とカウンター越しに一声かけると、彼女はマスクを少し引っ張って、何やらもごもご答えてくれた。かすれ声でハッキリ聞き取れなかったが、私の言葉は通じたようだ。
今はただ、彼女の体調が早く回復することを願うばかりだ。
正直に言えば、彼女のいない元町は元町ではなく、なぜかTIMEにも力が入らない。
例のウエイトレスはカウンターの向こうで、コーヒーを作っていた。
コーヒーをオーダーして、しばらくすると、思いがけず、彼女がコーヒーを運んで来てくれた。
一瞬、ニッコリした。風邪が良くなって、接客ができるようになった証に違いない。
私はずっと気がかりだったので、「全快ですか?」と思わず、聞いてしまった。
TIMEを読み終えて、レジにいくと、偶然彼女がそこにいた。
支払いを終えて、「お大事に。」と言うと、「ありがとうございます。」と笑顔で答えてくれた。店(一つ目のドアー)をでて、何気なくレジの方を振り返ると、彼女はこちらを見て、ニッコリ笑って会釈をしてくれた。
「あっ、しまった。」久々のチャンスだったのに、エクボを見忘れてしまった。残念!!
PART41【2014/9/30】
最近にしては珍しく、例のウエイトレスがオーダーを取りに来た。
私は迷わず、グアテマラ(ストレートコーヒー)を頼んだ。
彼女の体調が気になっていたので、聞いてみた。「全快ですか。」「大分良くなってきましたが、あと一歩です。」私は続けた。「Nさんは、元気でないといけません。」「もう少しで元気になりますが・・・」
余り執拗では、彼女を困らすので、黙ってはいたが、本心は「Nさんがお休みしているときは、TIMEに気合が入りません。」 と言いたかったが、告白もどきになってしまうので、私は言葉を変えた。
「Nさんは、元町のかんばん娘なので、いつも元気でいないといけません。」「・・・」
この日、支払いのときに、今までに見たことのない、彼女の最高に女性らしい仕草を垣間見た。おつりをコインで差し出すときに、下に手を添えて手渡してくれた。
些細なことではあるが、なんでこんなにも丁寧で女性的な仕草が、極自然にできるのか。
なかなか簡単にはできることではないと思うのだが・・・。感激!!
PART42【2014/10/7】
例のウエイトレスがオーダーを取りに来た。私は迷わず、ブラジル(ストレートコーヒー)をオーダーした。
台風が意外と静かで期待外れに終わったので、そのことで一声かけようとしたが、隣におばちゃん達がいたのでやめた。・・・
支払いを終え、一つ目のドアを出たところで、何気なくドア越しに後ろを振り返ると、彼女が笑顔で見送ってくれていた。
「あっ、ラッキー。」 笑顔がとてもチャーミング。
私は照れ隠しに頭をかたげて、とぼける振りをしてしまった。髪型に変化があったときは、サムアップサインを送ろうと思っていたのだが・・・。
PART43【2014/10/9】
この日は例のウエイトレスがオーダーを取りに来たが、「今日は普通でお願いします。」と断りを入れ、ブレンドコーヒーを頼んだ。そして、普段通りにタイムを開いた。
いつもなら、コーヒーは 1〜2分、遅くとも3分くらい待てば、運ばれて来ていたが、この日は違った。私は常連で、2年くらい通っているが、順番がテレコになったことも記憶にない。
オーダーを受けてくれたのも、いつも甲斐甲斐しく働いている例のウエイトレスだ。
「まさか・・。」 10分くらい経ったであろうか。さすがの私も呼び出しボタンを押した。直ぐに、壁の陰から彼女が現われ、「あっ。」 と一声発して、また消えた。
平謝りでペコペコ、「すみません。入力したつもりなんですが、・・・。」 「大丈夫ですよ。たまには誰にでもあります。」 勿論、「なんで?」 とは思ったが、怒る気は毛頭ない。
むしろ、クレーマーに急変する若者や口うるさいおばちゃん連中でなくて良かった。
何か考え事でもしていたのであろうか。小さなミスをごく稀にするのは人間的なこと。
私には、むしろ嬉しいこと、初めて見た彼女の愛嬌、オトナ可愛いとはこのことか。
オーダー、確認、コーヒー、請求書。
PART44【2014/10/11】
例のウエイトレスはテーブルの片付けに精をだしていた。久しぶりにその姿を見たが、女性らしい仕草の中で、テキパキとこなす仕事ぶりが爽やかだ。
最近は、5時頃になるとカウンターの中で下ごしらえに回ることが多い。
私はいつも支払いを終えると、無意識にチラッと彼女を見てしまう。
いつもなら、会釈して店を出るのだが、この日は、彼女が下を向いていたので、そのまま店を出ようとした。
「ありがとうございました。」 ドアが半分閉じた頃、背後で彼女の声が聞こえた。
振り返ると、既にドアは閉まっていたが、彼女が上半身を少し曲げて、視線を遮る柱の陰から見送ってくれていた。
思わず、私はガラス越しに彼女の姿を覗き込むように探し出した。
彼女はにっこり会釈をしてくれた。営業スマイルであっても、私はこのにっこりする姿を見るだけで、とても癒された気分になるのだ。
レジにいたウエイトレスは、私がドアの外で腰を曲げて、彼女を振り返る姿に気づいていたと思う。「変なおじさん。」さぞ滑稽に見えたに違いない。
最近、例のウエイトレスはカウンターの奥で下ごしらえをしていることが多い。つまり、フロアーに来て接客をしないので、一声構うチャンスがないのだ。
そんなこともあって、最近は支払いを終えて店を出る時には、ついついカウンターの奥の方を見てしまう。
この日、私がガラス越しに振り返ると、彼女がこちらを向いて見送っ
ていてくれた。 私は思わず、苦笑いをして、その場をしのいだが・・・。 彼女を目に焼き付けておこうという魂胆が見え見えだ。
彼女がいつも一生懸命に下ごしらえをしているので、無意識に目がいってしまうのだ。
店にはいると、最近にしては珍しく、例のウエイトレスが出迎えてくれた上、オーダーも取りに来てくれた。5時頃になるとカウンターの奥に入るので、間一髪であった。
他のウエイトレスには、声をかけないのだが、彼女には無意識に一声かけてしまう。
彼女を近くで見たのは久しぶりであった。
私は気分を良くして、迷わず、ブラジル(ストレートコーヒー)をオーダーした。以前、彼女から冗談っぽく、「他のウエイトレスにもオーダーしていたりして・・」 と言われたことを忘れてはいない。勿論、話の成りゆきであろうが、ストレートは彼女だけだ。
この日はトリプルで、コーヒーも彼女が運んで来てくれた。
店が比較的空いていたこともあり、また、一言構ってしまった。「先ほど言っていたカフェって何ですか。」
彼女は嫌な顔をせず、テーブルの横へ立ち位置を変え、手振りを交えながら丁寧に説明してくれた。
大体、予想はしていたが、・・・納得!! どうも、コーヒー作りと接客を中心とした役割のようだ。
PART47【2014/10/26】
この日は禁煙席が混んでいたので、喫煙席に入った。そこはカウンターから少し離れているが、丁度カウンターの正面にある。例のウエイトレスはカウンターの中でコーヒーを作っていた。
ウエイトレスが来たので、私はいつものようにブレンドコーヒーをオーダーした。
しばらくすると、コーヒーがやってきた。私は早速、コーヒーにミルクを入れて、TIME速読の準備をした。コーヒーは少し薄めではあったが、濃さ、渋み、フルーティさの点で、今までも、時折味が微妙に違っていたので、私はさして気に留めていなかった。
私はコーヒーをすすりながら、TIMEに集中した。しばらくして、私が一息つくと、彼女がカウンターからおもむろに出てきて、自ら私にコーヒーを運んできた。
彼女は言った。「先ほどのコーヒー少し薄くないですか。取り替えさせてください。」
私は驚いた。私はコーヒーをオーダーした最後の人ではないはずなのだが。どうして私のコーヒーがいつもより薄いと気が付いたのだろう。それは謎だ。.
PART48【2014/11/3】
店に入る前に外から中を覗き込むと、2人組の客が案内を待っていた。私が2つある自動ドアの一つ目に足を踏み入れると、カウンターの中で下ごしらえをしていた例のウエイトレスは、私に気づいたようだ。
彼女の目配り、気配りには一目置いている。
客が店に一歩踏み入れると、まるでその後に起きることが、ごく自然に頭に浮かんでくるようだ。
私が店に入ると、ウエイトレスが、「少しお待ちください。」 と断りを入れて、先客を空きテーブルに案内した。
するとどうだ、彼女がカウンターの奥から出て来て、テーブルを素早く片づけ、席を作ってくれた。私の知る限り、下ごしらえをしているウエイトレスが接客に回ることは珍しいことだ。
下ごしらえの手が空いていたのであろうが、極力、客を待たせない他のウエイトレスにはない気配りには感心するばかりだ。
私は十分気分を良くしていたのだが、この日は、更に、彼女がオーダーまで取りに来てくれた。
私がTIMEの準備をしながら、彼女をチラッと見やると、雰囲気が少し違っていた。思ったことを直ぐ口に出す性分の私は、つい一声かけてしまった。「雰囲気がいつもと違いますね。」「前髪も束ねてみました。」
もう一言、「すごくキリッとしていますよ。」「ありがとうございます。」
お世辞ではない。本当にキリッとしていた。
カウンターの奥ではわき目もふらず、下ごしらえをする中で、時折見せる笑顔、やはり、「オトナ可愛い。」 という形容がピッタリだ。
PART49【2014/11/9】
最近は店の混み具合を考えて、4時頃に元町に入ることにしている。
入店すると、直ぐにウエイトレスが窓際の席に案内してくれた。
私はブレンドを注文し、早速TIMEのページを開いた。
いつもなら、この時間は空き席が目立つのだが、この日は違った。ずっと満席が続いていた。
TIMEに一息ついて、カウンターの奥に目をやると、例のウエイトレスがわき目も振らずスイーツを作っていた。
これだけ、客足が続くと店には嬉しい悲鳴だが、作り手には悲鳴を上げたいくらいの忙しさに違いない。
少し前に彼女が言っていた、言葉が頭をよぎった。「下ごしらえは大変なんですよ。」
5時頃になると客足も少しずつ鈍り、先程までの賑やかさが嘘のように消えていた。
私は支払いもそこそこに、また一言構ってしまった。
「この時間は、急に客足が退きますね。」「そうなんですよ。先程までは大変でした。」
いつもなら、店を出る途中、一つ目のドアを出たところで、チラッと後ろを振り返るのだが、
それでも、習性とは恐ろしい。
二つ目のドアを超えて店を出たところで、不覚にも振り返ってしまった。
薄暗い店の外からドアの格子板を通して、店の中を覗き込んでいる変なおじさんを演じてしまった。彼女はそんな怪しげな振る舞いにも、嫌な顔を一つもせず、遠くからこっくり頷いて見送りの会釈をしてくれた。
やはり、チャ―ミングなだけでなく、なかなか得難い大人の女性だ。
ここ4、5日、例のウエイトレスの姿を見ることができなかった。
月曜日は定休日なので、何も心配する必要はないのだが、火曜日にも顔を出さない。そして、水曜日もとなると、いろいろなことが気になりだした。
2ヶ月前に彼女が風邪をひいて、休んでいた時と同じだ。
「また、風邪でもひいたのか。・・・転職、引き抜き・・。」
あれこれ思いを巡らす中で迎えた金曜日、「きっと、いろいろあるんだろうな。」 モヤモヤした気持ちのまま、ダメもとで立ち寄った元町珈琲。
店に足を踏み入れると、例のウエイトレスが私に気づいて、カウンターの中から案内してくれた。「空いていますから、お好きな席にどうぞ。」
私は一番奥の静かで、TIMEにはベストな席についた。
すぐに、彼女が注文を取りにやってきた。私はオーダーもそこそこに、一言投げかけた。
「なにか、久しぶりですね。」「そうですね。石垣島に行ってきました。」
「また風邪でもひいたんじゃないかと、心配していましたよ。」「ありがとうございます。元気です。」 ・・・
「え〜と、今日はブラジル? ストレートコーヒーをお願いします。」「ありがとうございます。」
何はともあれ、風邪ひきでなくて良かった。」 安堵!!
たったそれだけの会話だが、自分でも恥ずかしいくらい、顔の筋肉が緩んでいたのは言うまでもない。
PART51【2014/11/26】
私は支払いをするとき、いつもビルブックを受け皿に置いた後、チケットをその横に置いていた。だが、この日は違った。
チケットを入れようとすると、彼女の腕がスルスル〜と私の目の真下にまで、伸びてきた。しかも、受け皿をはるかに超えていた。
彼女は腕を目いっぱい伸ばしていたようで、目線が低く、まるで私を見上げているようでもあった。
実際はともかく、私にはそのように見えた。少し奇妙ではあったが、何とも色っぽい仕草であった。
すらりと伸びた指と手のひらを真近に見たので、不覚にも一瞬固まって、手をまじまじと見てしまった。私はジェントルマンにはなれそうもないようだ。
PART52【2014/11/27】
例のウエイトレスが注文を取りに来てくれた。
「いらっしゃいませ、今日は何に致しましょうか。」 この日はやけに丁寧な問い掛けだ。「え〜と、ストレートコーヒーをお願いします、」「ありがとうございます。」
しばらくすると、彼女がコーヒーを持ってきてくれた。
そして、一言 「鈴木さんは、先生をしているのですか。」 いきなり、鈴木さんと呼ばれて、「何で俺の名前を知っているんだ?」 頭の中で、疑問がぐるぐる回った。
「もう一度、英語をやってみたいんですけど、どこで教えているんですか。幾らなんですか。」 思ってもみない声掛けだったので、おやまあって感じだ。
「ESSかたつむりのHPがあるので、詳しいことはそちらを見てください。元町珈琲も載せてますよ。大半はNさんについてですが・・・。」
「いいんですか、見ても。」「恥ずかしいですが、良いですよ。」 それからのTIMEは、読んでも読んでもまったく上の空だ。
あの内容は困りますと言われる心配と恥ずかしさが入り混じった気持ちのまま、TIMEのリーディングを終えた。
レジに向かうと、彼女が素早く移動してくれた。
思わず、一言 「実はメッチャ、恥ずかしいですよ。」 彼女はニッコリ微笑んで答えてくれた。
「大丈夫ですよ。」まるで何が描かれているのか、予測がついているようだ。近くにいたウエイトレスも、キョトンとしてこちらを見ていた。出口に向かうと、後ろから元気な声が聞こえた。
「ありがとうございました。」 恥ずかしさは残るが、嬉しいという気持ちの方が勝っている。店の外で、一人ニンマリとする変なおじさん!!
PART53【2014/11/28】
例のウエイトレスは、カウンターの中にいた。
席に着くと、ウエイターがオーダーを取りに来た。今ではず〜と彼女以外はブレンドと決めている。
例え冗談であっても、彼女から言われた、「他のウエイトレスにもストレートをオーダーしていたりして・・・。」 この言葉を忘れてはいない。
しばらくすると、彼女がコーヒーを運んで来てくれた。
思いがけず、私に一言 「HP、少し見ました。そんな風に見られているなんて、恥ずかしいですが、嬉しかったです。」「私も恥ずかしですよ。」 この一言を返すのが精一杯であった。
心配していたことも言われず、良かった。とても嬉しい。まずは、安堵!!
やはり、思っていた通り、彼女はしっかりした大人の女性だ。まだまだ、しばらくは元町のお世話になりそうだ。 一期一会!!
PART54【2014/12/12】
駐車場から元町に向かう途中、ウエイトレスが店の前で、おばちゃん連中と何やら話をしていた。おばちゃん達は明るく賑やかであった。
きっと、つり銭の間違いに気づいて、急いて捕まえに来たのであろう。
その様子を一目見て、直ぐに例のウエイトレスだと分った。
店に足を踏み入れると、彼女がドアの向こう側に立って、元町スタイルで招き入れてくれた。最近では珍しいことだったので、口が滑った。
「珍しいですね。」「今日はホールなんですよ。」案内された席に着くと、そこはTIMEにはベストの場所であった。勿論、私のオーダーはストレートコーヒーだ。
しばらくすると、これ又、彼女がコーヒーを運んで来てくれた。今日は超ラッキーデイのようだ。
「ごゆっくり、どうぞ。」 明るくハキハキした感じの良い響き。
もう一声と思ったが、ここはぐっと息をのみ込んで、TIMEを開いた。
しばらくすると、偶然は重なるものだ。彼女がおもむろに隣のテーブルにやってきて、片づけを始めた。その仕草は、まぎれもなく、入店間もない頃に見せた、テーブルをゴシゴシ磨くように甲斐甲斐しく働く姿であった。
私も男の端くれ、そんな振る舞いにはめっぽう弱い。
2週間前に聞いた英会話のことを思いだし、また、口が滑ってしまった。
「Nさんは、英語をやっていたんですか。」 よくよく考えてみれば、名前で呼びかけたのは始めてだ。
「はい、少しだけ・・・。」「再開するんだったら、早い方がいいですよ。」「はい、でも・・・。」 いつもなら、長話は迷惑になるので、一言二言だけだが、この日は違った。
私の中で、無断でHPにアップしたことが気になっていた。
彼女は、後片付けの手を止めて、一言、「大丈夫です。」
そして、トレイの上に溢れんばかりの食器を載せて、足早にテーブルを離れた。
何が大丈夫なのか、深く知る由もないが、「あのHPの内容では困ります。」 といったことではなさそうだ。
もう少しだけ、このエッセイの続きが書けるかも知れない。
TIMEのノルマをこなしレジに向かうと、カウンターの前にいた彼女が素早く移動してくれた。支払いを終えて出口に向かうと、後ろから爽やかな声が聞こえた。
この日は、少し照れがあったので、振り向かないつもりでいたが、心と体は別な動きをするようだ。不覚にも一つ目のドアを出たところで、振り返ってしまった。
テキパキと軽やかに、甲斐甲斐しく働く姿の中で、時折見せるしなやかで女性らしい仕草、癒されるのは私だけでは決してないはずだ。
PART55
店に足を踏み入れると、ウエイトレスが空き席を案内してくれた。
席に着くと、私は迷うことなく、ブレンドをオーダーして、TIMEを開いた。
しばらくすると、久しぶりに例のウエイトレスが、コーヒーを運んで来てくれた。
私は秘かにアップしたHPを読まれた気恥ずかしさで、言葉を失っていた。
彼女はコーヒーを置くと一言、「ごゆっくり、どうぞ。」
私は、「ありがとうございます。」と言うだけで精一杯であった。・・・
TIMEのノルマをこなしレジに向かうと、彼女が移動してくれた。
支払いを終え、一言構おうとしたが、この時もまた言葉を失ってしまった。
言いたいことも言えず、モヤモヤした気持ちのまま出口に向かうと、後ろの方から、いつもの明るい声が聞こえた。「ありがとうございました。」
自分で言うのも変だが、私は本当に分かり易い。
反射的に後ろを振り返り、無意識に一声かけてしまった。
「寒くなるようなので、風邪を引かないようにして下さいね。」
彼女は一瞬ニヤリと微笑んだかと思うと、いつにない硬い表情で返事をくれた。 「ありがとうございます。」
もっと気の利いた言葉をかけたかったのだが、・・・ (「Nさんが風邪で休んでいる元町は元町ではないですよ。TIMEにも気合が入りません。」)
彼女がチャーミングとはいえ、こんなことをレジで言うのは、人前で暗に告白していると同じこと、変なおじさんが嫌なおじさんに変わってしまう瞬間だ。
一つ目のドアを出たところで、チラッとガラス越しにレジの方を見ると、彼女がじっとこちらを見ていた。
2つ目のドアを出たところで、私はもう一度、今度は意識的にレジの方を見てみた。まだ、彼女がじっとこちらを見ていた。
いつものにっこりほほ笑むお見送りはなかった。 「あ〜あ。」
彼女がフレンドリーとはいえ、少し度が過ぎていたかも知れない。
もっと自然に振る舞えという気持ちといい加減にしておけという気持ちが戦っている。ここは素直な気持ちで、”Let it go." ありのままで〜 でいくしかない。
PART56【2014/12/26】
所用があったので、いつもより早く、14:00頃に元町に行った。
車から降りると、何気なく周りを見渡してしまう自分がいる。
以前、例のウエイトレスがいっていた、「207、それって、私、私。 」 207が停まっていると、妙に足取りが軽くなるのだから、私はとても分かり易い。
店に入ると禁煙席が混んでいたので、喫煙席に案内された。私は迷わず、ブレンドをオーダーし、TIMEを開いた。
いつもなら、彼女はカウンターの奥で下ごしらえをしているのだが、その姿はなかった。この日はホールの担当で、年の瀬ということもあり、接客で多忙を極めていたようだ。
しばらくすると、喫煙席にもやってきて、ところ狭しく動き回っていた。
私も男の端くれ、時折チラッと見るのだが、キビキビした動きの中で見せる、しなやかな振る舞いに、ついついTIMEを忘れてしまう。
他のウエイトレスと一味違う女性らしい仕草はどこから来るのだろうか。
TIMEのノルマをこなし、レジに向かうと、彼女はテーブルの片付けをする手を止めて、レジに移動してくれた。私に背を向けていたのに、まるで後ろに目がついているようだ。その目配り、気配りはとにかく凄い。
「相変わらず、俊敏な動きをしていますね。」 一言声をかけると、にっこり笑って返す、いつものリアクション。 「ありがとうございます。」
いつも同じだが、これだけで変なおじさんは癒されるのだ。
一つ目のドアを出たところで、さりげなくレジの方を振り返ったが、見えたのはガラスに映った自分の姿だけ。 落胆!!
「そうか〜。」 昼間は光の加減で、内側は見えないのだ。
PART57【2015/1/7】
超久しぶりに、例のウエイトレスが空き席を案内してくれた。最近では珍しく、ホールの担当のようだ。「空いていますので、お好きな席にどうぞ。」
TIMEを開いて一息つくと、ウエイトレスがオーダーを取りに来た。明日は所用があって、この日は早く寝ないといけないので、ホットミルクを注文した。私はカフェインには滅法弱いのだ。
しばらくすると、今度は例のウエイトレスがホットミルクを持ってきてくれた。クリスマスや年末にも挨拶をしていなかったので、この時とばかりに一声かけた。「今年もお世話になるので、よろしくお願いしますね。」
彼女はニッコリ頷いて、言葉なくテーブルを離れた。こんな言葉をかける客は一人もいないに違いないが、気持ちに素直でありたい。
”Let it be〜〜”
TIMEのノルマをこなしレジに向かうと、彼女が移動してくれた。
年初からユニフォームが茶色の開襟に変わり、とても似合っていたので、一声構ってしまった。「ユニフォームと髪の色がマッチしていますね。」
彼女はニッコリ笑いながら、隣にいたウエイトレスに伝えた。「ユニフォームが茶髪と合っているそうです。」 その女性の方が茶髪が目立っていたので、勘違いしたのであろうか。いや、意識的に振ったのかも知れない。
「まるでユニフォームに髪を合わせたみたいですよ。」
出口に向かう途中、私は振り向きざまに、もう一言投げかけた。しかし、レジの前には2人連れの客が立っており、彼女との会話が途切れてしまった。
仕方なく出口に向かうと、客の後ろからいつもの爽やかな声、「ありがとうございました。」 やはり、彼女は凄い!!
接客は「いらっしゃませ。」で始まり、「ありがとうございます。」で終わる。彼女はどんな状況でも、極自然なおもてなしができるのだ。
PART58【2015/1/8】
TIMEに一息ついて、カウンターの方をちらっと見ると、例のウエイトレスと若手のウエイトレスが話をしていた。彼女が何やら仕事のコツを教えていたのであろう。
TIMEのノルマをこなし、レジに向かうと、若手のウエイトレスが移動してくれた。支払いを終えると、私は一声かけた。
「コーヒーを作る様になったんだね。分からないことがあったら、Nさんに教えて貰いなさいよ。」 彼女はキョトンとしていた。
私は例のウエイトレス以外には声をかけないのだが、小さな魂胆があった。
その瞬間、例のウエイトレスがチラッとこちらを向いたので、勿論、一声かけた。やった!!
「しっかり教えて上げてくださいね。Nさんが教えれば、しっかり育ちますよ。」「しっかり・・・・? 今、何て言いました。」彼女はうまく聞き取れなかったのか、聞き耳をたてた。 「Nさんが、エヌさんが教えれば、彼女は大きく育ちますよ。」「ありがとうございます。」 返事は、いつも明るくすっきり爽やかだ。
PART59【2015/1/13】
この日は、超久しぶりに例のウエイトレスが、コーヒーを運んでくれた。
時折カウンター越しに、声をかけることはあったが、彼女がテーブルに来たのは、ひと月ぶりのことだ。
「久しぶりですね。」「そうですね。」 店内は比較的空いていて、回りに客もいなかったので、一声かけた。「茶色になってからは、カウンターの奥ばかりですね。ユニフォームは選んでいるんですか。」
そんな問いかけに嫌な顔もせず、答えてくれた。「そんなに若くはないので・・・。でも、夜には若い人も2人います。」 「今後はいつもカウンターの中ですね。すっごく残念です。」
彼女は頷くでもなし、言葉なくテーブルを離れた。そんなに若くはないので、白は似合わないから茶色ってことなのか。そんなことは微塵もないのだが・・・。私は少し違って、そんなに若くはないから接客はしないと理解した。
後日、勘違いとわかったのだが・・・。年明けからの1〜2週間は、カウンターの中のウエイトレスは茶色を身に着け、接客に回ることがなかった。20才前後の若手だけが白を身にまとい、接客に専念していた。
彼女はカウンターの中に入り浸りとなり、接客に回ることはない、近くで見ることができない、そんな思いがちらっと頭の中を突き抜け、残念ですの一言が、思わず飛び出してしまったのだ。
女性の若さはパワーだが、全てではない。溌溂とした仕事ぶり、女性らしい仕草、彼女は、そんな魅力をたくさん持っている。白もバッチし素敵であったし、気配りもずば抜けている。勿論、いまの茶色も素敵だ。
正月明けに、英会話の生徒の一人からおみくじを貰った。
「望みごと、万事整う。」 おみくじが余り、もう一つ開いてみたら、「望みごと、万事整う。」、大大吉のダブルであった。
さて、今年はどんな年になるやら・・・。
PART60
思い出してもハッキリしないのだが、多分、1月に入ってからであろう。
例のウエイトレスは、私を避けているのではないか。
今までは、そんな振る舞いは記憶にないのだが・・・。いやいや、私は常連なので、我慢をして、気持ちを隠していたのかも知れない。
最近は、私がレジに向かうと、下ごしらえをしている彼女が、突然、視界からす〜と消えていたり、急に背を向けたり、全くもって不可解だが、気のせいではなさそうだ。実際はともかく、そんな風に見えた。
この日、支払いを済ませ、ちらっとカウンターの方をみると、先ほどまでいた彼女が視界から消えていた。何気なく下を見るを、しゃがみ込んでいた。
これも偶然なのか。いやいや、まるで隠れているようであった。
ちらっと目が合うと、その目は怯えているようでさえあった。変なおじさんが、嫌なおじさんに変わってしまったようだ。
思い当たる事といえば、かなり前、彼女に一声かけた時、ちらっと周りをみて、しかも、ビルブックを口の横にあてて、答えてくれたことがある。お客との会話はご法度かも知れない。
もう一つは、彼女との会話を無断で、HPに載せたこと。後日、「大丈夫です。」 といってはくれたが、内心は心穏やかでなかったに違いない。
実はもう一つ、他のウエイトレスが近くにいるときに、一声かけたこと。
これも客との会話がバレバレだ。彼女の不都合を考えず、フレンドリーさに甘えていたことを反省するしかない。引いた振る舞いは、そんな気持ちの表れであろう。 反省!!
わき目ばかりしてないで、もっと英語を死ぬ気で頑張れという、天の声のようだ。
PART61
最近は、例のウエイトレスがオーダーを取りに来ることがない。一声かける機会がないということだ。やはり、私を避けているのだろうか。
そっぽを向かれると思いつつも、習性とは恐ろしい。支払いを終えて、ドアを出たところで、ちらっとガラス越しに振り返えると、彼女が見ているようないないような。少し前までに見せたニッコリ笑う会釈ではなかったが、こっくり頷いたような・・・。
「おやっ、会釈のお見送り?」 と思いつつ、目を凝らすと、もう一度頷いたようだが、今一、ハッキリしない。
元町はTIMEに集中するために来ているのに、チャーミングなウエイトレスにわき見を振ってばかりで情けない。
PART62【2015/1/24】
店に足を踏み入れると、ウエイトレスがいった。「少しお待ちください。」
奥の方にいた例のウエイトレスが私に気づき、空き席を案内してくれた。最近では珍しくホールの担当のようだ。
「喫煙席なら空いていますが、どうなさいますか?」 4人掛けの席だったので、私は迷わず、喫煙席についた。
座って一息つくと、また彼女がやってきた。「禁煙席に空きができますが、変わりますか?」 私が禁煙席が好きなことを覚えていて、わざわざ確認に来てくれたのだ。これで3回目になる。やはり、彼女の気配りは抜群だ。
私は移動することにした。 「Let’s go.」 思わず英語で答えてしまったからか、彼女は、一瞬ニンマリしたようだ。
最近は私と目が合ったとき、やけに表情が固かったが、この日は違った。
「少し待っていてくださいね。すぐに片づけますから・・。」 片づけをする仕草をぼんやり見ながら待っていると、彼女からコールがかかった。「終わりました、どうぞ。」 「今日は彼女? ラッキー!! ストレートでも飲むか。」 そんな思いて待っていると、他のウエイトレスがオーダーを取りに来た。残念!!丁度、シフトの変わり目で、偶然の遭遇であった。
ちらっとカウンターの奥を見ると、真剣な眼差しで下ごしらえを始めた彼女が見えた。最近はオーダーを取りに来ないので、ストレートを味わうことができないが、元町のこんな一コマでも、癒しを感じるのだ。
PART63【2015/1/27】
TIMEのノルマをこなして、レジに向かうと、例のウエイトレスが移動してくれた。この日は、彼女と一度も目を合わせることなく、支払いを済ませた。
こんなことは一度もなかった。
以前なら、ビルブックとチケットを受け皿におくと、直ぐOKサインをくれていた。ウンともすスンともいわないまま、キーをたたき始めたので、レジの前で立ち往生してしまったほどだ。
「はい、今日もチケットですね。」 このように言われると、躊躇なく出口に向かえるのだが・・・。彼女にしては、珍しいことだ。
「寒くなってくるようだから、風邪を引かないで下さいね。」 以前、彼女に一声かけた時、初めニッコリ、そして、固まってしまったことがある。
レジで目を合わせると、構いの一言が飛んでくるので、予防線を張ったのかも知れない。大丈夫!! 変なおじさんではあるが、いつもKYなおじさんではないぞん!!
PART64
正月明けからしばらくは、茶色を身に着けたウエイトレスは、ほとんどホールに出て来ていなかった。 2〜3日前、彼女が仕切りの向こう側でテーブルの片づけをしていた時、ず〜と気になっていたことを、思い切って聞いてみた。
「茶色でもホール担当はあるんですか。」 「ありますよ。」 その一言が現実となったのだ。
この日は、例のウエイトレスがオーダーを取りに来てくれた。胸のつかえというか、モヤモヤが晴れたって感じだ。TIMEの手を止めて、顔を上げた瞬間、思わずサムアップを送ってしまった。彼女はそんな私を見て、にっこり、いやいや、グリム、ニヤとしたといった方が当たっている。
僅かではあるが、彼女の左頬にエクボをみた。本当に久しぶりのことだ。
とても大人可愛いの一言に尽きる。TIMEの調子があがったことは言うまでもない。
PART65【2015/2/8】
例のウエイトレスが、手際よくテーブルの片付けをしていた。
今までも片づけをしてはいたが、この日ほど沢山の片づけをしている姿を見たことがない。あちらもこちらも、座敷の中まで、その動くさまはテキパキとしていて、ついつい、うっとり見とれてしまうほどだ。
TIMEに一息ついた時に、そんな仕事ぶりを見るだけで、ふんわりとした温かい気持ちになってしまう。
TIMEのノルマをこなして、レジに向かうと、丁度、彼女が先客の精算を終えたところだ。 「ついでにお願いしますね。」 一声かけるとグリム、そして、一言、「ありがとうございました。」 以前と同じ明るく爽やかな響き。安堵!!
この日はドアを出たところで、思わず後ろを振りかってしまった。
するとどうだ、久しぶりのお見送り、「おやまあ〜。」 て感じだ。少し前に見せていた硬い表情が、少しだけ緩んでいた。
店を出て、愛車に向かう足取りは至って軽やか。私は本当に分かりやすい。
PART66【2015/2/10】
例のウエイトレスは、カウンターの中で、下ごしらえをしていた。ホール担当が出払っていたので、案内を待っていると、彼女が素早くカウンターから出て来て、空き席を案内してくれた。
「あちらの席が空いていますので、どうぞ。」 時計を見ると、4時を回っていた。
最近、この時間にはいつもカウンターの中にいたので、今日はオーダーを取りに来ないと思いながら、TIMEを開いた。
幸いにも予想が外れて、彼女がオーダーを取りに来てくれた。 私は思わず、冗談っぽく呟いてしまった。 「おやっ。」 彼女はニッコリ微笑んで、「おやおや〜〜。」 久しぶりに彼女の愛嬌を見た。左頬のエクボが超チャーミング。
「今日は、キリマンジャロ? ストレートをお願いしますね。」 いつもなら、彼女は即座に、「ありがとうございます。」 と答えるのだが、この日は違った。「いいですか?」「はい、お願いします。」「ありがとうございます。」 帰り際に出口の看板を見てみたら、この日はブラジルであった。
彼女はこの違いを知っていて、念押しをしたようだ。納得!! チャーミングなだけではない。スイーツを作るときの集中した眼差し、ホールを動き回るテキパキとした動き、仲間と談笑するときに見せる笑顔、数え切れない魅力がいっぱいだ。
PART67
TIMEを読み終えてレジに向かうと、例のウエイトレスが移動してくれた。
たった一言だが、思い切って英語で声をかけてみた。"This is a coffee ticket. I pay by this. I will be back." 彼女は思わずにっこり、左頬に可愛いエクボ、そして、あっけにとられたのか固まってしまった。
結構度胸がいったが、元町で英語を話す貴重な一歩であった。最近は出口に向かう途中は、後ろを見ないように我慢するのだが、一つ目のドアを出たところで、ガラス越しに振り返ってしまった。彼女は、まだ操作中であった。
二つ目のドアを出たところで、彼女の姿を目に焼きつけておこうと、もう一度振り返ってみると、ガラスに映ったのは自分の姿だけ。落胆!!
店の外が明るい時には、ガラスが光って中が見えないのだ。落胆!!
PART68【2015/2/24】
所用明けに元町に行くと、例のウエイトレスは定位置(カウンターの中)にいた。風邪を引いてしまったようだ。マスクをしていた。傍目で見ていても、茶色の開襟だけでは寒いのではと気になっていたが、心配が現実となった。
気のせいかも知れないが、ちらっと目が合うと、目を伏せられてしまった。構いの一言が嫌で、防波堤を張ったのかも知れない。偶然かも知れないが、心配はご無用!!
ウエイトレスとして、女性として、どんなに素敵であっても、仕事中の迷惑を顧みず、声掛けはしないぞん。いつまで我慢できるか自信はない。ただただ、はやく良くなることを祈るばかりだ。
PART69【2015/3/3】
風邪が大分良くなったようだ。店に足を踏み入れると、最近にしては珍しく、例のウエイトレスと目が合った。・・・・支払いを済ませ、出口に向かう途中にチラッとカウンターの方を見ると、また彼女と目が合った。彼女はいつも客の出入りに目配りをしているので、目が合うのは偶然なのだが・・・。
しばらく前に見せた避けるような素振ではなかった。安堵!! 毎日が日曜日の私と違って、風邪を引いても簡単には休みが取れず、無理をすることもあるに違いない。・・・ 体調が戻って良かった。
彼女が居ない元町珈琲は元町では無いのだから。
PART70【2015/3/12】
超久しぶりに例のウエイトレスがオーダーを取りに来てくれた。もちろん、注文はストレートだ。久しぶりのダブルで、この日はコーヒーも運んで来てくれた。
「ごゆっくりどうぞ。」 私は思わず、一声かけた。「時々、英語で話しかけていいですか。」 「ええ?? 無理ですよ。」 とのお断り。
私は英語になると、あきらめが悪い。「いやいや、コーヒーの注文と支払いのときに、少し話しかけるだけですよ。」 彼女は観念した様子で一言、「いいですよ。」
とはいえ、次に席に来るのは、いつのことになるやら。 少し前に英語で話かけたときには、余りにも突然のことで驚いたのか、固まってしまった。彼女ならきっと聞けるはずなのだが・・・。
PART71【2015/3/13】
店に入ると、例のウエイトレスが空き席を案内してくれた。昨日に続きダブルだ。「おやまあ〜。」 って感じだ。 彼女が注文を取りに来たので、英語でコーヒーをオーダーしてみた。昨日、英語で注文していいか確認し、OKを貰っている。”I
want blend coffee today.” 分かるでしょ?」 「はい。」 無理して英語で返すことはない。彼女は頷いて席を離れた。
しばらくすると、彼女がコーヒーを運んできてくれた。勿論、私は一言、「Thank you very much.」 彼女は超恥ずかしそうではあったが、英語で答えてくれた。 「You are welcome.」 久しぶりに見たオトナ可愛い表情、これでいい。彼女を巻き込むのは少し気が引けるが、彼女以外では意味がない。
支払いを終えて、出口に向かう途中、カウンターの方をちらっと見ると、彼女の明るい一言、「ありがとうございました。」 ここ1ケ月半くらい聞いていなかった。即座に、もう一言返すことができたら・・・・ 「Thank very much for your nice coffee.」 「You are welcome.」 となったら、最高!! ゆっくりゆっくり
PART72【2015/3/20】
例にウエイトレスは久しぶりにホールの担当であった。この日は混んでいたので、2人席に案内された。私は迷わず、ストレートコーヒーを注文した。
英語で注文しようとしたが、気恥ずかしさで、日本語が出てしまった。彼女はオーダーを入力すると、隣の四人掛けのテーブルの片付けを始めた。そして、比較的空いているときの気の利いた一言。「変わりますか。いいですよ。」
勿論、私は移動した。今度は英語が出てきた。You are very kind.Thank you very much. 彼女は蚊の鳴くような声で、答えたような、答えないような。(You are wellcome.) この日はダブルで、彼女がコーヒーも運んで来てくれた。
私は、一言、Thank you very much. この時も、you are wellcome.を期待したが、そうは問屋が卸さなかった。余ほど恥ずかしかったようで、私の方が思わず、言ってしまった。「すっごく、恥ずかしそうですね。」 彼女は言葉無く、足早に席を離れた。
TIMEのノルマを終えてレジに向かうと、ウエイトレスは出払っていた。のれん越しに、ちらっと水汲み場を覗くと彼女が出て来て、レジに移動してくれた。この時も英語で一言構おうとしたが、言葉を失ってしまった。
なぜだ??仕方なく、出口に向かった。ドアを出たところで、ガラス越しに振り返ると、外が明るいにも関わらず、しっかりと彼女の姿が見えた。久しぶりの会釈のお見送り。思わず、じ〜と見つめてしまった。「そっか。」 外が明るくても、一つ目のドアからは見えるのだ。
PART73
TIMEに一息ついて、顔をあげると、例のウエイトレスが所狭しと、テーブルの片付けをしていた。デキパキとしていて爽やか、その仕草はとても女性的で美しい。
以前なら、うっとり見つめることができたのに、今は気恥ずかしさで、ちらっとしか見ることができない。
レジに向かうと、下ごしらえをしていた彼女が、私に気づき移動してくれた。
英語で構おうとしたが、言葉がでてこない。やっと出た日本語の一声、「また明日も来ますね。」 これで精一杯だ。 「お待ちしております。」
一つ目の扉を出たところで、ガラス越しに振り返ると、こっくり頷くお見送り。もう一度しっかり見ると、軽くお辞儀をしたお見送り。車に戻る足取りが、軽くなったのは言うまでもない。
PART74【2015/4/7】
最近は、例のウエイトレスはカウンターの中ばかりだ。やはり、ホールの大半は、若手が担当している。年初の予想が当たってしまった。このままでは、ストレートを味わえない。残念!!
TIMEを読み終えて、レジに向かうと、優しそうな中年のウエイトレスが、レジの横にいたが、意味ありげにっこりするだけであった。
するとどうだ、彼女の背後から例のウエイトレスが、さりげなく移動してくれた。
支払いを終え、英語で構おうと思ったが、止めておいた。私にとってはお遊びだが、彼女にとっては仕事中、そんなことに付き合っている暇はない。
代わりに、日本語で一言、「これ(コーヒーチケット)、いつも同じで、分かりやすいですね。また来ますね。」「はい、お待ちしております。」 彼女の声はいつも心地よい。
一つ目の扉を出たところで、ガラス越しに振り返ると、こっくり頷くお見送り。笑顔が、とてもチャーミング。年明けの一時期に見た表情の硬さが抜けていた。安堵!!
PART75【2015/4/10】
207がいつもの場所に止まっていた。「彼女は端の方に止める性格なのかな?」 そんな思いで、店に足を踏み入れた。案内されるまま、一番奥の席に陣取り、TIMEを開いた。・・・・ 一息ついて、カウンターの方をちらっとみると、何やら雰囲気の違ったウエイトレスが、下ごしらえに精をだしていた。例のウエイトレスのようではあるが、確かではない。
TIMEを終えてレジに向かうと、その姿は紛れもなく、彼女であった。支払いを済ませ、もう一度カウンターの方を見ると、彼女と目があった。
少し前なら、言葉を失っていたが、この日は違った。
「いつもと雰囲気が違いますね〜。」 「前髪もあげてみました。」 彼女の声はキリッとして、すっきり爽やか、笑顔もチャーミングだ。
「とても素敵で、チャーミングですよ。」 他のウエイトレスがいなかったら、もう一声かけたに違いない。それでも、本音はなかなか隠せない。出口に向かう途中、後ろ向きのまま、思わず、サムアップサインを送ってしまった。 彼女に届いたであろうか。
勿論、他のウエイトレスには、悟られないようにしたつもりだが、女性は鋭い。まあ、いいか。「ありのままで〜〜」
PART76【2015/4/16】
例のウエイトレスは、今日もカウンターの中にいた。ホールだけでなく、いろいろなことがこなせて、重宝されているってことだ。真剣な眼差しで下ごしらえをする姿を、遠くからさりげなく見るのも悪くない。
TIMEを読み終えて、レジに向かう途中、カウンターの方をみると、先ほどまでいた彼女の姿が消えていた。少し気にはなったが、支払いを済ませた。
やはり、習性とは恐ろしい。もう一度、カウンターの方を見ると、そこには彼女の姿があった。「いったいどこにいたのか。これも偶然? 」 目を凝らしてみると、会釈のお見送り。
いっときの固い表情が消えて、穏やかに見えたのは気のせいか。チャーミングな彼女には笑顔が一番だ。
PART77【2015/4/21】
例のウエイトレスは、久々にカウンターの外にいた。店に足を踏み入れると、私に気づいて、「空いていますので、お好きな席にどうぞ。」 心地よい響きだ。席について、少し期待したが、思惑は見事に外れた。・・・・
レジに向かうと、例のウエイトレスがコーヒーの下準備をしていた。 「お願いします。」 一声かけると、彼女は素早く移動してくれた。
「これでお願いしますね。」 他のウエイトレスがいなかったからか、思わず一言でてしまった。「5月からは違ったものもオーダーしますよ。」 声掛けした割には、なぜか半身になっていた。「本当ですか。」 「また来ますね〜。」 最近はなぜか彼女を直視できないのだ。一言返すだけで精一杯、なんとかみ合わない会話なことか。
ドアを出たところで、それとなくガラス越しに振り返ると、会釈のお見送り。
お見送りがあるだけで、元町に来た甲斐があるってもんだ、良しとするしかない。妙に納得!!
PART78
例のウエイトレスのユニフォームが茶色の開襟から白の7分スリーブに変わっていた。白も似合っている。「2人掛けの席なら空いていますが、どういたしますか?」 エアコンの風が吹かなければ、どこでも構わない。
席に着くと、彼女がオーダーを取りに来てくれた。勿論、一言構った。「ユニフォームが変わったんですね。ストレートをお願いします。」 彼女はニッコリ、そして、一言、「これ、忘れていませんでしたか。」 それは他愛のないクリップだが、TIMEのお友達、「探していたんですよ〜。」 彼女はもう一度ニッコリ、席を離れた。
しばらくして、TIMEに一息つくと、彼女が甲斐甲斐しく、テーブルの片付けをしていた。遠くから見ても、その仕草は女性的で、美しい。
帰り際に、カウンターの方を見ると、彼女が気づいたので、「クリップ、ありがとうございました。」 と一言。「え〜〜??」 彼女の手前にいたウエイトレスも反応したような、しないような。・・・・
元町珈琲の一コマ、私が常連とはいえ、自ら忘れ物を届けてくれる気遣い、驚くばかりだ。元町に通うのは、時折、こんなさりげない癒しを感じるからであろう
PART79【2015/5/6】
店に足を踏み入れると、例のウエイトレスがホールを所狭しと動き回っていた。TIMEに集中していると、彼女がが隣のテーブルの片付けを始めた。
いつもなら、さりげなく見るのだが、この日見たのは足元だけ。すぐ、どこか違っていることに気づいた。
しばらくすると、今度は少し離れたテーブルの片付けを始めた。チラッと足元をみると、その出で立ちは、タイトなパンツ。体の線がはっきりして、少しセクシーってことか。「う〜ん。」 エプロンをしているので、腰の辺りは見えない。
以前、彼女が言っていた、「良く見てますね。いい意味で見てくれていますか。」 勿論、「いい意味でですよ。」 と即答したが、今日はスケベおやじかも。私も男の端くれ、そりゃ多少は見るわいね。でも、誰にでも目がいく訳ではないぞん!!
PART80【2015/5/7】
TIMEのノルマを終えて、レジに向かうと、カウンタのーの外のウエイトレスが、中にいた例のウエイトレスをちらっと見た後、移動してくれた。最近は多忙でない限り、ホール担当が精算するようだが・・・。
ちらっと彼女を見たのは偶然なのか。私はいつも支払いをするとき、「これでお願いします。」 といってチケットを置いている。ただ、目は別の方を向いている。目線を辿れば、一目瞭然。「はは〜〜ん。」 女性は色恋ごとには鋭い。客のそんな態度には気づくわな。「まあ、いいか。」 素直で、ありのままで・・・。
PART81【2015/5/8】
英会話を始めた頃、夢の中で英語を話したことがある。これだけでも驚くべきことなのに、なんと今朝の夢は元町珈琲。コーヒーを待っていると、運んできたのは例のウエイトレス。「やった、この日はラッキーデイ。」 そんな思いで、2〜3言葉を交わすと、最後に彼女から出た一言、「私、このお店、今日が最後です。」
「え〜え。」 一瞬にして、夢から覚めたのは言うまでもない。少し前、他のウエイトレスが元町を卒業するとき、「私、今日が最後です。」 って、挨拶されたことはあるが、なんと身がすり替わって、Nさんとは・・・。 正夢でなければ良いが、彼女はいつもカウンターの中、確認するチャンスもない。
PART82【2015/5/19】
最近、彼女はいつもカウンターの中、たまにホールに出てくるときは、他の客のところばかり。「あ〜あ。」 なぜかスッキリしない。
モヤモヤした気持ちのまま、TIMEのノルマをこなし、支払いに向かうと、彼女が気づいて、ホールから移動してくれた。レジに着くと、「オー、マイ、ゴッド。」 他のウエイトレスと彼女がレジの前で、横に並んでいた。
奇妙!!「何かダブってますね。」 というと、彼女はニッコリ、笑顔がとても大人可愛い。隣にいたウエイトレスは、私の目線を辿ったのか、さりげなく消えていた。
PART83【2015/5/20】
この日はトリプル、胸のつかえがとれた日だ。店に足を踏み入れると、例のウエイトレスのお出迎え、「空いていますので、お好きな席にどうぞ。」 超久しぶりに彼女が注文を取りに来てくれた。私は気分を良くして、「たまにはケーキも頂きますかね。抹茶とブレンドをお願いします。」 彼女はビックリした様子で、「珍しいですね〜。」 「たまには変化しますよ。先日、オリジナルドリンクも試しました。」 「え〜え、どうでした?」 「スカッとして、美味しかったです。もう少し暑くなったら、きっと人気が出ますよ。」 「そうですか、ありがとうございます。」
これだけでも十分癒されたが、この日はまだあった。彼女はすぐ戻ってきて、隣のテーブルの片付けを始めた。「グッドチャンス!」 他の客がいなかったので、気になっていたことを聞いてみた。「Nさん、一つ聞いて良いですか。」 少し戸惑った真顔な返事、「はい。」、 「この店を止めることは無いですよね。」 「え〜??、ないですよ!」 「実は2週間くらい前に、元町の夢を見て、Nさんが出てきたんですよ。”私、この店、今日が最後なんです。” って、言われたんですよ。ビックリして目が覚めて、寝れませんでした。」 「大丈夫です。でも、そうなったら、お話ししますね。」
「安心しました。その時は花束を持って来ますよ。今日はTIMEに気合が入ります。」 収穫は大きい。彼女の可愛いエクボと大笑い、モヤモヤがすっきり晴れた。
PART84【2015/5/28】
これが気になるってことか。店に足を踏み入れた時、レジに向かった時、彼女の居場所をそれとなく探すのは、この気持ちがそうさせるのだろう。
久しぶりに、例のウエイトレスがコーヒーを持って来てくれた。いつもなら、「ごゆっくり、どうぞ。」 些細なことだが、この日は違った。「ありがとうございます。」 彼女は気配りが鋭い。昨日、私が2年間で初めて、ミックスサンドをオーダーしたことを覚えていたのか。・・・まさか。
レジに向かうと、彼女が移動してくれた。「元町の夜の雰囲気は、昼間と違いますね〜。」 「夜も来たんですか?」 「アルバイトを始めて、これの関係(TIMEを指さして)で、話をし過ぎて喉が渇き、レスカを頂きました。・・・また来ますね。」
レジでの長話はご法度、私も少しはTPOを考えるようになった。彼女の目を見つめすぎて、頭がクラクラ。不覚にもガラス越しに振り返ることを忘れてしまった。 店を出たところで、「はっ」 と我に気づいて、ちらっとレジの方を見ると、光るガラスの陰からぼんやり見えた彼女のお見送り。
PART85【2015/6/1】
今日は月曜日、例のウエイトレスは休みのはずだが、カウンターの中で出迎えてくれた。 「おやま〜。」 一瞬固まって、じ〜と見つめてしまった。彼女は動じる様子もなく水汲み場に移動した。TIMEを開くと、彼女がおもむろにオーダーを取りに来てくれた。「連勤ですか。」「はい。」 「折角だから、これをお願いします。」「ケーキも食べますか。元町ロールですね。」 「たまにはね。ブレンドもお願いします。」「ありがとうございます。」 いつ聞いても、いつ見ても、ハキハキしていて、いい感じだ。TIMEに馬力が掛かったのは言うまでもない。
レジに向かうと、彼女が移動してくれた。支払いを終えて、ガラス越しに振り返ると、チャーミングなコックリ頷くお見送り。どうも一つの法則があるようだが、気のせいか。そんなことに思いを馳せながら、車に向かう変なおじさん!!
PART86【2015/6/2】
最近、例のウエイトレスはカウンターの中ばかり。シフトのせいだが、可愛いエクボが見えない。TIMEの速読にも身が入らない。
モヤモヤした気持ちの中で、ふと一息つくと、彼女がテーブルの片づけに精を出していた。その仕草たるやとても女性的で美しい。そんな中、突然、「ガチャ〜〜ン。」 厨房に運ぶ途中で、何かを床に落としたようだ。「失礼しました。」 音の出た方を見ると、彼女と目があった。 「やっちゃった〜。」 言葉はないが、その表情たるや、首をすくめてニッコリ、久しぶりに見た大人可愛さ、とてもチャーミングだ。元町に来る甲斐があるってもんだ。
PART87【2015/6/3】
この日は棚からぼた餅。支払いを終えて店を出るとき、ちらっと後ろを振り返ったが、例のウエイトレスの姿はなかった。諦めて、・・・・ 車のエンジンをかけようとした矢先、元町の裏口がガタガタ、ドアが開いた。ドアの方を見ると、彼女がしゃがんで、何やらゴソゴソしていた。「おやま〜。」 って感じで、目が点になった。私に気づいたのか、手を振って「バイバイ」 の仕草をしてくれた。ガラス越しに、私も思わず、手を上げてバイバイのサイン。
私は一生懸命な仕草に弱い。下ごしらえの真剣な眼差し、テーブルをゴシゴシ、ゴミだし、しゃがんでゴソゴソ、とてもけな気で、チャーミング。
PART88【2015/6/15】
駐車場に車を止めると、いない筈の207。例ウエイトレスは休みのはず、「おやま〜。」で感じだ。店に足を踏み入れると、案の定、彼女はカウンターの中。カウンターの中なら、他の男性客に近くで見られない。何やらほっとした気分で、TIMEを開いた。しばらくすると、「失礼します。」 聞きなれた明るく爽やかなトーン。彼女がコーヒーを持って来てくれた。 「あっ!!」 思わず、叫んでしまった。
隣の客がこちらを見たくらいだから半端ではない。うつむき加減で、たれた前髪の間から垣間見えた笑顔、とても大人可愛い。・・・・
レジに向かうと中年のウエイトレスが移動してくれたが、私の目は違う方を向いていた。支払いの前にチラッ、支払いの後にもチラッ、素敵なウエイトレスに目が行くのは男の性、ここは素直に有りのままで・・・。
PART89【2015/6/19】
スナックのママさんと元町でデート・・・。いやいや、ママさんの娘の就労証明にサインをして欲しいと頼まれただけ。
支払いを済ませ、カウンターの中にいた例のウエイトレスをチラッと見たが、間合いが悪く、次の客に 「お二人様ですか。」 の一声。 モヤモヤした気持ちのまま、ドアを出たところで、ガラス越しに振り返ると、コックリ頷くお見送り。客の出入りに鋭い彼女のこと、目が合ったのは偶然だが、帰りの足取りが軽くなるから不思議だ。今日もチラチラ見る変なおじさん。
PART90【2015/6/22】
駐車場に車を止めると、いないはずの黒の207。「月曜日なのに、なんで??」 店に入ると、ウエイトレスの一声、「空いていますから、お好きな席にどうぞ。」
禁煙席の奥をみると、例のウエイトレスが片づけをしていた。私に気づいて、会釈をしてくれた。私はTIMEにベストな席に陣取り、ブレンドを注文した。しばらくすると、彼女がコーヒーを持って来てくれた。「失礼します。」 いつ聞いてもハキハキしている。隣に客がいなかったので、聞いてみた。
「月曜日はお休みではなかったですか。」 「変わったんですよ。これからは金曜日がお休みです。」 「そうなんですか。」 長話はご法度とはいえ、もう一言くらいはと思ったが、言葉が続かない。
レジに向かうと、色白のウエイトレスが移動してくれた。「これでお願いします。」 習性とは恐ろしい。チラッとカウンターの方をみると、上目遣いでこちらを向いた彼女と目が合った。顔を見るだけで、心の臓がドキドキ。
PART91【2015/6/25】
TIMEのノルマをこなし、レジに向かうと、ホールにいたウエイトレスが移動してくれた。チケットをケースに入れると、ひと際大きな一声、「ありがとうございます。」 その一声で、後ろ向きで仕込みをしていた彼女が振り返った。私はその瞬間を見逃さなかった。うまい具合に彼女を捕らえた。
目が合ったのは偶然だが、私にとっては(彼女の)休み前のおまけ。しっかり顔が見えただけで良し!
PART92【2015/6/29】
車を止めて、外に一歩足を踏み出すと、車の陰からチラッと見えた例のウエイトレスの小走り。席に着いて、TIMEを開くと、彼女がコーヒーを運んで来てくれた。「先ほど、駐車場で見ましたよ。」 「はい、忘れ物を届けていたんですよ。」 「かっこよく走っていました。」 本当はもう一言、「ポニーが揺れて、かっこ良かったですよ。」 と言いたかったのだが、長話はご法度。
「ごゆっくりどうぞ。」 彼女は一言を残して、テーブルを離れた。
レジに向かうと、彼女がホールから移動してくれた。 この日はチケットの安売り。「20枚お願いします。」 「え〜、20枚ですか?」 こんなに多く買う客はいないに違いない。「シートで20枚ですよ。」 数える手つきは、手際よく片づけをする時と違い、意外とぎこちない。いや、とても丁寧だ。
「いち、にい、・・、もう一度、確認しますね。」 都合、2回、チケットを数えるか細い指先をじ〜と見てしまった。「ありがとうございます。」 ハキハキした響き。
習性とは恐ろしい。この日も、ドアを出たところで、カラス越しに振り返ってしまった。こっくり頷く、久しぶり見たお見送り。いつかサムアップサイン。「他の男性客にもあんな風に会釈するのかな〜。」
PART93
この日は、珍しく禁煙席に陣取った。「おやま〜。」って感じで、これはラッキー。仕切りの下から、例のウエイトレスの指先が見えた。下から覘きたい衝動に駆られたが、勿論、我慢、我慢。・・・若手の男性への仕事上の指示? 談笑? う〜〜ん、男性が横にいるだけで、モヤモヤするのはなぜだ。いかん!!
支払いを終えて、カウンターの方をチラッと見ると、彼女と目が合った。
思わず、構ってしまった。「珍しいですね。この3人組。昨日も一昨日もこの3人でしたよ。「そうですね。固まってしまいました。」 「S、F、Nチームですね。」 「ほぼ当たっていますが、少し違います。Fでは・・・。」 「え〜?」 カウンターに近寄り、男性の名前を確かめた。「Fではなくて、Iでしたか。」 勿論、目は彼女の方を向いている。彼の怪訝そうな顔をみて、後ろを振り返ることなく、出口に向かった。
PART94【2015/7/9】
カウンターの中に若い男性の姿はなかった。安堵!! チームを組んでる彼が横にいるだけで、モヤモヤ。嫉妬? 小さな嫉妬に違いない。他のウエイトレスには感じない嫉妬、「うそ〜。」 て、感じだ。 レジに向かうと、焙煎機の陰にいた彼女が移動してくれた。 以前なら、しっかり目を合わせて、話ができていたのに、今はなぜかできない。彼女が目を逸らしているのか、私がビビッているのか。 支払いを終えると、隣には誰もいないことを確認し出口に向かった。
ドアを出たところで、レジを振り返ってみた。少し首を傾けた特徴のある仕草でのお見送り。 笑顔ではなかったが、少しモヤモヤがスッキリ。私は分かりやすい。
PART95
例のウエイトレスは、カウンターの中ばかりで、TIMEに力が入らない。
支払いを終えて、カウンターの方を見ると、 後ろ向きに下ごしらえをしていた彼女がチラッと振り返った。「ラッキー!!」 この一瞬を見逃さなかった。
垂れた前髪の間から垣間見えた、こっくり頷く会釈。あるときは真顔、あるときはチャーミングな笑みで返してくれる、キリットした真顔もナイスだ。
いつ頃から、こんな風に意識するようになったのか?カウンターに入ることが多くなって、近くで見る機会が減った頃からだ。少し離れたところから、微妙な表情の変化が見えるだけで、良しとしよう。
PART96【2015/7/28】
この日は、趣向を変えて、レスカオレをオーダーしてみた。ほどよいレモン味をすすりながら、TIMEをあさった。・・・。
レジに向かうと、例のウエイトレスが移動してくれた。元の立ち位置が、チームを組んでいる男性と離れていたので、気分を良くして、一言構ってしまった。
「ちょっと、変えてみました。」 「え〜?」 上手く聞き取れなかったようだ。「今日は、いつもと違ったものを頂きました。彼女はビルブックをみて、「そうですね、どうでしたか?」 「美味しかったですよ。でも、体が冷えてしまいました。」「そうですか? はははは。」 最初にレジに立った時は、表情が固かったが、久々に見た大笑い、凄くチャーミング。「外の温度だったら、バッチリですよ。・・また来ますね。」
ドアを出たところで、さり気なく振り返ったが、レジには彼女の姿はそこになく・・・。落胆!!
PART97【2015/8/4】
歯科矯正をしている色白のウエイトレスがオーダーを取りに来てくれた。一見、ムスッとしているが、話してみると意外と明るく良くしゃべる。口当たりの良いレスカオレをオーダーし、TIMEを開いた。・・・。
レジに向かうと、例のウエイトレスが、色白のウエイトレスと談笑していた。気の合う話しぶりだ。私に気づいて、レジに移動してくれた。勿論、一言構った。「また、体が冷えてしまいました。」 私が何をオーダーしたのか、分かっていたかのように、請求書を確認することも無く、大笑い。「はははは。」 久しぶりに見た笑顔、接客や下ごしらえの時の真顔とは大違い、とてもチャーミングだ。思わず、もう一言、「冷たくても、止められませんよ。」 そして、彼女のグリム。
ドアを出たところで、彼女の姿を目に焼きつけておこうと、ガラス越しに振り返った。
こっくり頷いていたような、いないような。絵柄が視界を遮り、しっかり彼女の顔を捉えられなかった。いつか、サムアップサイン。また、貴重なチャンスを見逃してしまった。
PART98【2015/8/9】
207が見当たらない。「お休みかな?」 店に足を踏み入れると、やはり、姿はなかった。ブレンドを注文し、TIMEを開いた。・・・
レジに向かうと焙煎機の後ろにいたウエイトレスが移動してくれた。「ありがとうございました。」の一声。いないと分かっていても、定位置を見てしまう習性、「おや〜、誰?」 見慣れぬウエイトレスがいた。いやいや、例のウエイトレスではないか。髪型がオールバックのポニーに変わり、まるで別人、とても雰囲気が違っていた。目が点になり、じ〜〜と見つめてしまった。
遠いカウンター越しの一声はNGなので、思わず、髪をかき上げる仕草で、構ってしまった。彼女は、一瞬、グリム。いや、場違いな一声で、迷惑だったかも知れない。
帰り際に207を探したが、姿はなかった。誰かに送って貰ったのかも。彼?なぜかセンチな気分だ。
PART99【2015/8/16】
行きつけの飲み屋にいったら、ひょんなことから例のウエイトレスの話になった。ママさん曰く、「チェックマンらしき人との受け答えもハキハキしていて、仕事をバリバリやっていた。人が変わったみたい。」 とのこと。
ストレートコーヒーをすすりながらTIMEを開くと・・・、彼女はホールの中を、所狭しと動き回っていた。その手際がいいこと。ママさんの言葉を思いだし、チラチラと動きを見ていると、なるほどと思うばかりだ。テーブルの片付けや接客は機敏、流石だ。時折、店内の様子をチェックしているので、少しビッグになったのか、やる気満々て感じだ。
以前、彼女に言ったことがある。「Nさんは、元町のかんばん娘になるから、しっかりやりなさいよ。」 2年後には現実となった。、私も見る目があったということか。
PART100【2015/8/17】
レジに向かう途中、例のウエイトレスを見ると、下ごしらえをしていた。支払いを終え、カウンターの方をチラッと見ると、丁度、顔をあげた彼女と目が合った。こっくり頷く会釈、偶然ではあるが、妙に心ウキウキ。
習性、いやいや、私は確信犯。 ドアを出たところで、ガラス越しに思いっきり振り返ってみた。 もう一度、目が合った。恥ずかしながら、見つめてしまった。こっくり頷く会釈、これも偶然か。客の動きには目敏い彼女のこと、言わずもがなではあるが、愛車に向かう足取りは軽い。
PART101【2015/8/19】
例のウエイトレスは所狭しと動き回っていた。私に気づき、一言、「直ぐ片づけますので、少しお待ちください。」 しばらくすると、色白のウエイトレスが席を作ってくれた。ブレンドをオーダーし、TIMEを開いた。・・・、例のウエイトレスをチラッと見ると、ポニーにした髪を括って巻き上げていた。「オーマイゴッド。」 うっとりするほど大人って感じで、どこか色っぽい。
レジに向かうと、彼女が移動してくれた。思わず、彼女の後ろ髪を横から覗き込んで、一言、「マイナー変更ですね。」 彼女の表情が少し緩んだ。控えめのサムアップサイン。恥ずかしさで、彼女を直視できなかった。
勿論、ドアを出たところで、ガラス越しに振り返った。彼女は入力を終え、顔をあげたところ、コックリ会釈をしたので、私は更に気分を良く、今度は遠慮なしのサムアップサイン。彼女のグリム。 「やった!!」 ついにやった、心の中でニンマリ。それはそれは足取りが軽い。
PART102【2015/8/20】
207が停まっていない。定休日ではないはずだが・・・。店に足を踏み入れ、定番のカウンターを見渡すが、例のウエイトレスの姿はない。ブレンドを注文し、TIMEを開く・・・、 「失礼します。」 彼女がコーヒーを運んで来てくれた。少し前に見せた固い表情はない、 うって変わった明るい表情。 笑顔は緊張を解くという、久々に構ってしまった、「隠れていたんですか。」 彼女はにっこり頷き、テーブルを離れた。「おや〜」 うしろ姿がどこか違った。髪型? そうだ髪型だ。編み込んだ髪をポニーにしていた。昨日に続き、今日もイメチェン、うっとり見とれてしまった。
レジで一言、「また、変化しましたね。」 彼女は目の前に3人のお客がいるにも拘らず、間をぬって答えてくれた。「はい、ちょっと変えてみました。」 ここ数日、やけに明るい、私の気のせいか。何か良いことあったのかな〜。 邪推は惨め、止めておこう。
PART103【2015/8/21】
「おや、ま〜〜。」 て感じだ。例のウエイトレスが、今日も髪型を変えていた。どんな心境の変化なのか。入店間もない頃、彼女にいったことがある、「とても、キリッとして素敵ですよ。」 それと同じ、前髪も括ったポニー。
レジに向かうと、皆出払っていた。しばらくすると、厨房の方から彼女が出て来て、レジに移動してくれた。「すみません。」 の一言、苦情をいう気など毛頭ない、「全然、問題ないですよ。これでお願いします。」 勿論、一言構った。「 髪型がよく変わりますね。」 返事がないまま、吸い込まれるような目で見返されたが、固い表情ではなかった。穏やかとさえ言える。
一つ目のドアを出たところで、ガラス越しに振り返ったが、精算の途中、二つ目のドアを出たところで、もう一度、振り返ってみた。格子の間から見えた、確かに見えた、こっくり頷くチャーミングな会釈。元町に来る甲斐があるってもんだ。
PART104【2015/8/22】
「なんで??」 例のウエイトレスは、今日も髪型を変えていた。ゴムバンドで括った先を編み込んだポニー。4日連続、ここまで来ると、邪推を通り越して、不安にさえなってくる。髪を見せたい人がいるのか。複雑な気持ちで、TIMEを開いた。・・・・
ふと、顔を上げると、隣の席にコーヒーを運んできた彼女の後姿が目に入った。 「え〜。また?」 耳の辺りの髪を編み込み、その先はポニー、一時間くらいの間で、また、髪型を変えていた。今日1日で2回、4日で5回も変えたのだ。「え〜??」
レジに向かうと彼女が移動してくれた。私は思わず、首を少し横に傾けて、耳元の髪の編み込みを覗き込んでしまった。彼女は、一瞬、にっこり、そして、グリム。まるで、「どうですか。」 と言わんばかりだ。腰の横で、遠慮気味のサムアップサイン、「よし〜。」と一声かけてしまった。そして、また、彼女のグリム。
勿論、一つ目のドアを出たところで立ち止まり、ガラス越しに振り返った。彼女のこっくり頷く、笑顔のお見送り。他の男性客には見せたくないチャーミンな笑顔!!
PART105【2015/9/2】
超ラッキーデー。店に足を踏み入れると、「あっ、珍しくホールの担当?」
例のウエイトレスがオーダーを取りに来てくれた。心の中で、「ラッキー。」 だが、表情が固い。「洋梨のタルトとブレンドをお願いします。チケットを使います。」 「では、単品にしておきますね。」
彼女は一声のこして、テーブルを離れた。笑顔がないことにビビッて、もうひとつ構えない。
しばらくすると、彼女がケーキを持って来てくれた。まだ、表情が固い。普通なら、「ごゆっくりどうぞ。」 で終わるが、この日の私は違った。幸い隣に客もいない、勿論、構った。
「私の友達で、ママさんをやっている人いるんですよ。」「人間関係が広いですね。」「Nさんのこと凄く誉めてましたよ。時々男連れで、喫煙席に来ています。ちょっと派手な人です。」「あ〜、綺麗な方ですよね。以前、声をかけて貰いました。」 「う〜〜ん、Nさんには負けますよ。そのママさんが、とても変わったって言っていました。最近は仕事一筋って感じだって。」「そういう風に見えますか。
いまは、週一休で、実はもう一つバイトをしています。」 「え〜、そうなんですか。ママさんには、今頃分かったんかい、と言っておきました。・・・、Nさんは、凄いですよ。」 嘘偽りは微塵もない。「そんなふうに見て貰えて、嬉しいです。」
少し経つと、彼女がテーブルの片付けをし出して、私の近くにやってきた。
気になっていたが、我慢を装った。
やはり我慢しきれず、引き際に一言、「夏のイベントは終わってしまいましたか?」 8月20日頃にヘアースタイルが頻繁に変わっていたので、彼女の髪を指さしたつもりだが、見落としたようだ。「浴衣を着ました。」「浴衣?」「はい、ビヤーガーデンに行きました。」「浴衣を着てビヤーガーデンですか?」 「はい。」 「だから、髪型を変えたんですか?」「はい、くるくるしてみました。」「でも、4日で5回変わっていましたよ。毎日ビヤーガーデンですね。(冗談)
他のウエイトレも、時折変えていますが、記憶に残るのはNさんだけですよ。とても素敵でした。」 「ありがとうございます。また、時々、変えてみます。」 「そうなれば、嬉しいです。楽しみにしています。」 彼女はチャーミングなグリムを残して席を離れた。社交辞令か、小さな約束か、いずれ分かることだ。
レジに向かうと、彼女が移動してくれた。「これでお願いします。」 いつもなら、「はい、ありがとうございました。」 と続くのだが、何も言わないので、じ〜と見つめてしまった。一瞬、間をおいての一言、「ありがとうございました。」
勿論、ドアを出てから、ガラス越しに振り返った。まだ精算中だ。私は確信犯、店を出てから、もう一度振り返った。彼女はレジの前で、背筋をしっかり伸ばして、丁重なお見送り、ぐぐ〜〜と来るほど、とても大人可愛い。
PART106【2015/9/7】
9月2日の問い、”社交辞令か、小さな約束か。” やっと答えが出た。
例のウエイトレスが髪型を変えて、私との小さな約束を果たしてくれた。 「お〜〜。」、心の中で、ニンマリ。
ポニーにした髪をくるくると巻き上げた私好みの色っぽい髪型、「こんにちは。」 、コーヒーを持って来てくれた時、どこか違うと感じてはいたが、接客している時にチラッとみた後姿、間違いはない。
TIMEのノルマをこなし、意気込んでレジに向かったが、そこには姿なく、早帰りしたようだ。しっかり目に焼きつけておきたかったのだが・・・。
PART107【2015/9/8】
今日も、例のウエイトレスは、髪をくるくると巻き上げていた。
昨日、チラッとしか見えなかった色っぽい髪型、彼女は9月2日の約束に、しっかり答えてくれた。
支払いを終えて、チラッとカウンターの方をみると目が合った。光の加減なのか、顔が妙に白く見えたので、「おや〜?」 じ〜と見つめてしまった。
髪型を確かめようとした矢先に、他のウエイトレスが間に立ったので、私は身を横に傾けて、背後にいた彼女を覗き込んでしまった。ウエイトレスが気をきかして、身をかがめたほどだ。また、変なおじさんを演じてしまった。
PART108【2015/9/10】
支払いを終えて、チラッとカウンターの方を見たが、例のウエイトレスの姿はなかった。出口に向かうと、焙煎機の後ろに隠れていた? 彼女がおもむろにカウンターの奥に消えた。「あ〜あ。」落胆した気持ちで、愛車に向かった。
一息ついて、いざ、エンジンを掛けようとすると、裏口からガチャガチャとカギを開ける音が聞こえた。
「オップス、誰か出てくるのかな? 彼女??」 ピンポーンで感じ、紛れもなく彼女だ。両手に大きなゴミ袋を持っていた。目が点になって、じ〜と見つめてしまった。かなり離れていたが、車の中にいた私に気づいて、こっくり頷く会釈をしてくれた。
その後も直ぐ立ち去ることなく、その場に立っていたので、私は思わず、左手でバイバイのサイン、近くにいたなら、一声かけたに違いない。
「明日はお休みですね。無理しては駄目ですよ。しっかりリフレッシュしてくださいね。」 今日は棚からぼた餅だが、明日は彼女のいない元町、心なしかセンチな気分だ。
PART109【2015/9/19】
今日は最悪の日、真実は定かではないが・・。混んでいたので、店の中ほどの2人掛けの席に案内された。TIMEには窮屈だが、カウンターが丸見え、勿論、一息つく度に、チラチラと例のウエイトレスを見ていた。
集中した眼差しの下ごしらえ、・・・。3度目のチラ見だったか。彼女が仕事仲間の男性とかなり接近していた。次のチラ見で、「あっち行ってよ!!」 の素振り、彼がちょっかいを出したのか、仕事上の指示がそのように映ったのか、遠目から見ると、いちゃついているようにも見えた。
彼女が笑っていなかったことが救いだ。
若手がちょっかいを出し、先輩が振りほどく、まるでテレビドラマだ。私は一瞬目を疑い、心穏やかではなかったが、勘違いかどうか、いずれ分かる。
PART110【2015/9/30】
毎日が落胆の連続、例のウエイトレスはカウンターの中ばかり。
私が行く時間には殆どホールに出て来ない。唯一の朗報、9月19日以来、仕事仲間の男性とのイチャツキは見られない。これだけが救いだ。また、垣間見たら、・・・。
レジに向かうと、彼女の姿はなかった。「あ〜あ。」って、感じ。
支払いを終え、振り向きざまにカウンターの奥の方をみると、丁度、彼女が奥から出てきたところ、バッチリ目が合った。
真顔の透き通った視線、まるで吸い込まれるようだ。しまった。」 もう一度振り返って、チャーミングな姿を目に焼きつけておきたかった。
PART111【2015/10/7】
店に足を踏み入れると、カウンターの中にいたのは、例のウエイトレスだけ。「お好きな席にどうぞ。」 の一声。他のウエイトレスが来るものと諦めていたが、見事に予想が外れ、彼女が注文を取りに来てくれた。
隣に他の客がいたが、これ幸いと構った。「10年ぶりですね。」「そうですね〜。」「カウンターの奥で頑張っている姿を毎日見ていますよ。」
彼女はニコリとした後、「今日は何になさいますか?」 時々、妙に丁寧な言い回し。
「勿論、Nさんなので、ストレートですよ。」「ありがとうございます。」 また、ニコリ。例え営業用であっても、久しぶりに見るチャーミングな笑顔。Very nice!!
レジに向かうと、定位置のカウンターにその姿はない。落胆した気持ちで愛車に向かった。いざ、一息ついて、エンジンを掛けようとすると、ゴミ出しを終えた彼女が、裏口に向かって歩いていた。声をかけるには遠すぎた。落胆!!
PART112【2015/10/10】
今日はモヤモヤの日。9月19の再現に近い。
流石に仕事中のイチャツキはなかったが、カウンターの中の2人、例のウエイトレスと後輩の若者が話をしているところを見るだけで、・・・・。
他のウエイトレスには感じ得ない何か? そうだ、小さな嫉妬に違いない。
たまたまシフトでチームを組んでいるだけ? それにしても親しそう。8月に彼女が言っていた、「今年の夏は浴衣を着て、ビヤガーデンに行きました。」 ひょっとしたら、彼と一緒だった?? 「あ〜あ。」 ヤケクソな気分。
PART113【2015/10/11】
レジに向かうと、つい先ほどまでいた例のウエイトレスが消えていた。
チームを組んでいる若者の姿もない。何か腑に落ちないまま、愛車に向かった。
乗り込もうとした矢先、ちらっと後ろを振り返ると、洗濯機の囲いから透けてみえたシルエット、「おやま〜。」って感じだ。肩より膝がでている長い脚、低い姿勢、「ハハハ。」、紛れもなく、彼女のウンチ座り。
洗濯機の後ろで、休憩? 煙草でも吸っていたのか。超チャーミングな彼女がウンチ座り、昔は暴走華?
このアンマッチ、なかなかやるな! ますますミステリアスだ。ストレスの溜る接客業には、煙草も一服の清涼剤だが、気になったのは例の若者。
奥で皿を洗っていたのであれば良いが、一緒に休んでいたとしたら、超ショック!! シルエットは彼女だけだが、映らないところに居たのかも・・・。「あ〜あ」、いずれ真相は分かる。
PART114【2015/10/20】
例の彼女は3日連続のイメージチェンジ。
一昨日はいつも垂れている左側の前髪も束ねたポニー。昨日は編み込んだ髪を括り、その先も編んだポニー。今日は括った先は普通のポニー。凄くチャーミング!!
以前、英会話の生徒がいっていた。気合を入れたり、気分を変えたり、気になる人がいるときに変えるらしい。そっか、今日はデート?? 邪推はやめておこう。
支払いを終え、髪型を目に焼きつけようと、カウンターの方をチラッと見ると目が合った。吸い込まれるような眼差しに負けまいと、じ〜と見つめてしまった。コクリと頷く会釈、立ち話をしていた先輩のウエイトレスが、彼女の目線を辿り、こちらを振り向いたほどだ。
「ありがとうございました。」 いつもの明るい一声、久しぶりに車に向かう足取りが軽い。
PART115【2015/10/28】
これが気になっるてことか。店に足を踏み入れると、無意識に例のウエイトレスを探してしまう。見えるところに座るとTIMEに集中できないので、目の届かない席を探してしまうほどだ。
レジに向かうと、皆出払っていた。カーテン越しに奥を見ると、例のウエイトレスが気づき、「すみません。」 の一声、移動してくれた。
支払いを終えても、何も言わない。
他のウエイトレスは、「ありがとうございました。」 即一声あるのだが、構うから嫌われているのか。だが、習性とは恐ろしい。
ドアを出たところで、 ついつい振り返ってしまう。ガラス越しに、じ〜〜と見つめてしまった。こくりと頷く会釈、いつ見てもチャーミング!!
PART116【2015/11/5】
例のウエイトレスは超久しぶりにホールの担当だ。誕生日を聞き出せないまま、「あ〜あ。」 空しく時だけが過ぎて行く。
・・・彼女が仕切りの向こう側の片づけにやってきた。「いつも中にいるのに珍しいですね。」 意を決して聞いてみた。
「今日は若い子が病気で、代わりにやっています。」「あ〜、あのマスクですね。」「はい、最近はキッチンなんです。」「そのようですね。でも、たまにはホールにも出て来てくださいよ。」 もう一言が切りだせない、落胆!!
レジに向かうと、彼女が移動してくれた。うつ向き加減ではなく、硬い表情でもない吸い込まれるような眼差し、本来の仕草であった。
真顔が凄くチャーミング。じ〜と見つめてしまった。ドアを出たところでガラス越しの振り返り、彼女の姿をしっかり捉えた。きりっとした眼差し、凄く大人可愛い。
PART117【2015/11/11】
何であのおやじが、・・・。ふと、TIMEから目を上げると、例のウエイトレスが常連客に、コーヒーを運んでいた。ホール担当が出払っていたとはいえ、下ごしらえから出てくるのは珍しい。
以前、「今日の出勤は何時?」 、「今日は何時まで仕事?」 いろいろちょっかいを出していた。この日も一声かけるや、満面の笑みを見せて話しをしていた。それもかなり長話だ。
余りにも親しそうなので、オヤジの帰り際に、彼女のリアクションに目を凝らした。下ごしらえに集中して、オヤジに目線を向けることは微塵もなかった。安堵! だが、特別に親しい間柄なら、平静を装うこともある。
真実はいづれ分かることだが、彼女ならいっぱいファンがいても不思議ではない。
PART118【2015/11/16】
2年ぶりのメジャーなイメージチェンジ。髪型ではない。カラーリングが、凄く艶のあるブラックに変わっていた。何かあったに違いない。
今はセミロングだが、入店間もないころの腰まで伸びた超ロングで、エキゾチックな髪型に戻るかも・・・。
支払いに向かうと、カウンターの奥にいた彼女が振りかえり、チラッとこちらを見た。思わず、じ〜と見つめてしまった。目が合っただけにしては長かったのか、レジにいたウエイトレスが、ニンマリしたほどだ。
「変化していたので、じ〜と見つめてしまいました。」 の一声、また変なオヤジを演じてしまった。
彼女から目を逸らすことはないので、私からコクリと頷く会釈、これだけで何か得した気分だ。
PART119【2015/11/21】
カウンターの中には例のウエイトレスただ一人。
店に足を踏み入れると、いつもの明るい一声、「空いていますので、お好きな席にどうぞ。」 窓際の席につくと、アメリカンをオーダーしTIMEを開いた。
しばらくすると、聞きなれた一声、「失礼します。珍しくアメリカンなんですね。」「二日酔いなんですよ。」 「そうなんですか。」 いつもなら、すぐテーブルを離れるのだが、この日は違った。
「あの〜、実はこのお店止めることになりました。お話ししなければと思い、報告しました。今はバイトを2つしていますが、今後は一つに絞って頑張ります。」
彼女が店を止める、「ガ〜ン」 って感じだ。
2015年5月20日が現実となった。心の臓がバクバク、いつか来ると思っていたが、こんなに早いとは・・・。
平静を装い聞いてみた。「満足できる仕事なんですか。最終日はいつですか。」 「はい、時給が今より少し良くなります。30日までいます。」 「そうなんですか。・・・、約束通り、花をお送りしますよ。」「いえいえ、そんなこといいですよ。」 ここで引き下がる訳にはいかない。チラ見やガラス越しの振り返りに、いつも大人の対応をしてくれた。
「いやいや、約束なので、最終日に捉まえます。何時に終わりますか。」「7時です。」「では、7時に来ます。時間が変わるといけないので、直前に確認しますね。」 「はい。」 いつもなら、ちらっと姿を追うのだが、ただただうつろな目を向けるだけ・・・。
レジに向かうと彼女が移動してくれた。「ちっともTIMEに集中できませんでした。」 思わず本音がぽろり。
ドアを出たところで、ちらっと後ろを振り返ると、間に立っていた客の肩越しから、コクリと頷くお見送り。
「あ〜あ」 この癒しも後少しで見納めだ。
PART120【2015/11/30】
例のウエイトレスの退社日、とうとう来てしまった。
カウンターの奥にいた彼女がオーダーを取りに来てくれた。
「今日は最後ですね。最後のストレートコーヒーをお願いします。」 これまでなら、一言、「ありがとうございます。」 であったが、この日は違って淡々としていた。「はい。」 ただそれだけ。
周りに悟られないように、指で「7」をつくり、「 一旦、帰ってまた出直します。これでいいですか。」 と念をおした。「はい」 振り向きざまに頷いてグリム、テーブルを離れた。・・・・。
6:50頃、駐車場についた。 勤務が7:00に終われば、7〜8分ころには裏口から出てくるはずだが、別れを惜しんでいるに違いない。
出て来なかったら、肚を括らないといけない。花束を抱えて、店に入ることは、超恥ずかしい!!
しばらくすると、ゴトゴト音がして裏口が開いた。車の陰から黒い人影、目を凝らすと彼女だ。「店に来ると思っていました。」と言いながら近づいてきた。「それは恥ずかしいですよ。」
愛車のドアを開けて、花束を取り出そうとすると、「わ〜、本当だったんですね。」 驚きの声、「冗談と思ったんですか。他の人と見劣りしてはいけないので、奮発しました。」「そんな人いませんよ。凄〜い。」「はい、これ、ほんの感謝の気持ちです。オレンジが好きと聞いていたので、そのようにお願いしたのですが、花は少しで、リボンだけがやけに目立っています。」「いえ、オレンジありますよ。ありがとうございます。」
「これはラブレターです。いや、擬きです。」
彼女のグリム、必ず伝えておきたかった一言、「ついついチラ見したり、ガラス越しに振り返ってしまいましたが、いつも大人の対応をして貰いありがとうございました。」 彼女は穏やかな笑顔で、聞いていてくれた。やはり大人の女性だ。
「新しい職場では、Nさんらしく頑張ってくださいね。」「ありがとうございます。元町もよろしくお願いします。」 「はい、今後も来ますよ。・・・写真を取って良いですか?」 「はい、どこが良いですか。」 「207の前では、どうですか。」 「いえ、それはちょっと。」 「では、ここで。」 私は16才になるハリアーをバックに、彼女の写真を2枚取った。
「メルアドを教えて貰えたら送ります。わかりますか。」 「それが、うろ覚えなんです。どうしたら良いですか。」「それでは、携帯番号を教えて貰えませんか。」 「はい、ショートメールですね。」 「はい、それが分かれば、何とかなります。大丈夫ですよ、ビービ―鳴らしませんから・・・。
誕生日くらいですよ。2年半の私を見ていれば、分かりますよね。」 「はい」 やったって感じだが、その後は神のみぞ知る。
私にはもう一つ知りたいことがあった。
「カフェ風なら一度は見に行きたいのですが、店の名前を教えて貰えませんか。」「実は元町みたいな所ではないんです。運送会社で事務のバイトもしているのですが、空が出来たんです。」 「良かったじゃないですか。」「はい、一ケ月位は忙しいです。」
暗に今日が最後、見納めということだ。「HPの元町珈琲ストーリーも完結させるので、手が空いたら見てくださいね。」「はい。」本当に見てくれるかは知る由もないが・・・。
明るい別れはハグだが、人が行きかう薄暗い駐車場ではできない。
とっさに浮かんだ握手、私がさり気なく出した右手に反応し、彼女も右手を差し出してくれた。
ギュッと握った温かい手、「いつも、お見送りして貰っていたので、今日は私が見送りしますよ。」 「いえ、もう少し店に居ますので・・・。」 歓送会や引き継ぎがあるのであろう。「そうですか。では、ここで、頑張って下さいね。」「はい。」 彼女は裏口に向かって、闇に消えて行った。
私は愛車に乗り込んで、気になっていた写真の出来ばえをチャックした。
オ〜サム!! とても綺麗に写っていた。安堵!!
エンジンを掛け、ライトをつけると、「オー、マイゴッド!!」
彼女が裏口の前で立っているではないか。少しこちらを見た後に深〜いお辞儀、今日は私が見送りする番なのに・・・。凄〜い、最後の最後で感動! また一本取られてしまった。
私は思わず、バイバイのサインを送ったが、彼女に届いたであろうか。
やはり、彼女は気配りの女性、私が毎日元町に通ったのは、TIMEを読むためだけではない。
この癒しに魅せられていたからだ。本当にありがとう。
2014年4月、私が教えている英会話サークルに参加している生徒から、お土産を貰った。外見は砂糖の塊のような形をしていたが、小さな紙切れが無造作に丸められた“おみくじ”であった。
心の中で感じたことが、直ぐに顔に出る性分なのであろうか、生徒は私を見て言った。「先生、何を一人でニンマリしているんですか。」
おみくじには「待ち人来たる。」と、かすれた小さな文字で書かれていた。
一歩進めば一歩遠ざかるゴール、TIMEを物にするモチベーションをキープさせてくれた。
そこには、キビキビとホールを動き回り、甲斐甲斐しく働くウエイトレスがいた。自然とTIMEに馬力が掛かった。
待ち人は意外と身近なところにいたのだ。
私はただただうつろな目を彼女に向けるだけ、「満足できる仕事なんですか。」そう聞き返すだけで精一杯であった。
カウンター越しのチラ見やガラス越しの振り返りに、いつも大人の対応をしてくれた。
彼女の癒しは言葉では表せない。
「喫茶店にこもり、若いウエイトレスにはわき目もふらず、TIMEのノルマをひたすらこなす。」・・・
わき目を振ってばかりの2年半、師匠の足元にはとても及ばなかったが、もう一度初心に帰り、「豊田の離れ:元町珈琲」で頑張れということであろう。
Nさんの気配りと癒しに感謝! 本当にありがとう。